YouTube、トランプ氏の訴訟和解金2450万ドルを支払い – ホワイトハウスのボールルーム建設に寄付か

YouTubeがトランプ氏に2450万ドルの和解金を支払い

YouTubeの親会社であるアルファベット社は、ドナルド・トランプ前大統領とその同盟者が2021年に提起した訴訟に対し、2450万ドル(約36億円)の和解金を支払うことで合意しました。この訴訟は、YouTubeがトランプ氏のチャンネルを停止したことが、彼らの憲法修正第1条の権利を侵害したと主張するものでした。和解金のうち、トランプ氏に支払われる2200万ドルは、ホワイトハウスのボールルーム建設を支援する非営利団体「トラスト・フォー・ザ・ナショナル・モール」に寄付される予定です。

「政治的見返り」と専門家の見解

スタンフォード大学の法学教授マーク・レムリー氏は、この訴訟には「法的な根拠がなかった」と指摘しています。YouTubeは民間企業であり、憲法修正第1条の対象ではないため、利用規約に違反したアカウントを停止する権利があると述べています。レムリー氏は、今回の和解を「純粋な政治的見返り」と断じています。これは、アルファベット社がトランプ政権下で直面している複数の独占禁止法訴訟との関連性が示唆されており、大手テクノロジー企業が政治的圧力にどのように対応しているかを示す事例として、セキュリティおよび規制の観点から注目されます。

和解金の使途とアルファベット社の関与

トランプ氏は、自身の和解金2200万ドルを、ホワイトハウスに900席規模のボールルームを建設する計画に充てるよう指示しました。この建設には総額2億ドルが見込まれており、トランプ氏と複数の個人寄付者によって資金調達される予定です。CBSニュースによると、Googleを含む複数のテクノロジー企業が、このボールルームプロジェクトに500万ドル以上の寄付を約束していると報じられています。もしこれが正確であれば、アルファベット社からの総寄付額は、和解金と直接寄付を合わせて最低でも2700万ドル(約40億円)以上となり、目標資金の13.5%以上を占めることになります。

背景にある政治的圧力とコンテンツモデレーション

MAGA界隈は、アルファベット社が民主党を公然と支持していることや、保守的な言論を検閲しているという不満を長年抱いてきました。YouTubeは2020年から2023年にかけて、新型コロナウイルス、ワクチン、2020年大統領選挙に関する誤情報を拡散するコンテンツを積極的に削除し、多くの右翼系コンテンツクリエイターをプラットフォームから排除しました。2021年1月6日の議事堂襲撃事件後には、トランプ氏のチャンネルも停止されましたが、2023年には再開されています。

トランプ氏の弁護士ジョン・P・コール氏は、民間企業が政府と協力して行動する場合、その企業は「政府」と見なされ、憲法修正第1条の対象となると主張しましたが、レムリー教授はこの法的解釈を否定しています。YouTubeは最近、下院司法委員会に対し、バイデン政権が右翼系コンテンツの削除を「繰り返し、一貫して」圧力をかけてきたと主張する書簡を送付しており、政府とプラットフォーム間のコンテンツモデレーションを巡る「共謀」疑惑が浮上しています。

独占禁止法訴訟との関連性

今回の和解は、アルファベット社が現在直面している複数の独占禁止法訴訟と切り離して考えることはできません。Googleは最近、検索市場における違法な独占を巡る訴訟で、ChromeやAndroidの売却を免れましたが、デジタル広告交換市場における独占を巡る別の訴訟に直面しています。今回の巨額の和解金とボールルームへの寄付は、トランプ政権が大手テクノロジー企業に対して抱く不満を和らげ、将来的な規制や独占禁止法関連の措置に影響を与えようとする「効果的なご機嫌取り」であると見られています。

結論

YouTubeがトランプ氏に支払った和解金と、それがホワイトハウスのボールルーム建設に寄付されるという事実は、大手テクノロジー企業が政治的圧力、コンテンツモデレーション、そして独占禁止法訴訟という複雑な状況の中で、いかに自社の利益を守ろうとしているかを示しています。これは、企業が政治的影響力を行使し、規制環境を形成しようとする動きとして、セキュリティニュースの観点からも重要な意味を持つ出来事と言えるでしょう。


元記事: https://www.theverge.com/policy/791355/trump-youtube-google-antitrust-ballroom