イントロダクション
クラウドAIからオンデバイスAIへの移行が加速する中、スタートアップのQuadricがこのトレンドを捉え、目覚ましい成長を遂げています。企業や政府がクラウドインフラコストの削減と主権的AIの構築を目指す中で、Quadricのオンデバイス推論技術が脚光を浴びています。
同社は2025年に1,500万ドルから2,000万ドルのライセンス収益を計上し、2024年の約400万ドルから大幅な増加を見せました。さらに、2026年には最大3,500万ドルを目指しています。この成長により、同社の評価額は2022年のシリーズB時の約1億ドルから、2億7,000万ドルから3億ドルへと急上昇しました。先日、BEENEXT Capital Managementが運営するACCELERATE Fundが主導する3,000万ドルのシリーズCラウンドを発表し、総資金調達額は7,200万ドルに達しています。
オンデバイスAIへのシフトとQuadricの貢献
QuadricのCEO、Veerbhan Kheterpal氏によると、AIワークロードを中央集権型クラウドインフラからデバイスやローカルサーバーへ移行させようとする動きが、同社の成長を後押ししています。特に、2023年のトランスフォーマーベースモデルの普及が「あらゆるもの」に推論を組み込む流れを作り、過去18か月間で劇的なビジネスの転換点となりました。
Quadricは、NvidiaがデータセンターAIにおいて強固なプラットフォームであるのと同様に、オンデバイスAI向けにプログラマブルなインフラを構築することを目指しています。同社は自らチップを製造するのではなく、顧客が自社のシリコンに組み込めるプログラマブルAIプロセッサIPをライセンス供与しています。これには、モデルを実行するためのソフトウェアスタックとツールチェーンも含まれ、ビジョンや音声モデルのオンデバイス実行を可能にします。
Quadricの技術と市場戦略
Quadricの技術はチップに依存せず、コードによって駆動される点が特徴です。同社の顧客には、京セラやトヨタ車向けチップを製造する日本の自動車部品サプライヤーであるデンソーが含まれます。Quadricの技術を搭載した最初の製品は、ラップトップを皮切りに今年中に出荷される予定です。
また、Quadricは「主権的AI」戦略を探求しており、米国のインフラへの依存を減らすために商業展開を超えた市場にも目を向けています。特にインドやマレーシアの顧客を探索しており、MoglixのCEOであるRahul Garg氏がインド市場での戦略形成を支援する戦略的投資家として参画しています。現在、同社は世界中で約70人の従業員を擁しており、うち約40人が米国、約10人がインドを拠点としています。
中央集権型AIインフラのコスト上昇と、多くの国がハイパースケールデータセンターを構築することの困難さが、この「分散型AI」へのプッシュを加速させています。これにより、すべてのクエリをクラウドベースのサービスに依存するのではなく、ラップトップやオフィス内の小規模なオンプレミスサーバーで推論を実行する形態への関心が高まっています。
競争環境と差別化
Kheterpal氏は、AIモデルがハードウェア設計サイクルよりも速く進化している現状を指摘しています。顧客は、モデルアーキテクチャが以前のビジョン重視モデルから今日のトランスフォーマーベースシステムへと数ヶ月で変化する中で、コストのかかる再設計を必要とせず、ソフトウェアアップデートを通じて対応できるプログラマブルなプロセッサIPを必要としています。
Quadricは、Qualcommのように自社プロセッサ内でAI技術を使用することで顧客をロックインするベンダーや、SynopsysやCadenceのようにプログラミングが難しいニューラルプロセッシングエンジンブロックを提供するIPサプライヤーとは異なるアプローチをとっています。Quadricのプログラマブルなアプローチは、顧客が新しいAIモデルをソフトウェアアップデートでサポートできるため、チップ開発に数年かかる業界において大きな優位性をもたらします。
今後の展望
まだ初期段階にあるQuadricですが、すでに数社の顧客を獲得しており、長期的な成功は、現在のライセンス契約を高ボリュームの出荷と継続的なロイヤリティへと転換できるかにかかっています。同社は、急成長するオンデバイスAI市場において、その革新的なアプローチで存在感を増していくことが期待されます。
