Grindr非公開化の動きと背景
世界最大のLGBTQ+向けデーティングアプリ「Grindr」の主要株主が、個人的な財政難を理由に同社を非公開化する動きを見せています。Semaforの報道によると、元ヘッジファンドマネージャーのレイモンド・ゼージ氏と中国系アメリカ人起業家のジェームズ・ルー氏が、株価下落により担保として差し入れていた株式が不足し、シンガポール政府系ファンドTemasekの傘下企業に一部株式を売却される事態に陥りました。
両氏は2020年にGrindrを中国企業から6億ドル以上で買収し、2022年にはSPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて上場を果たしました。しかし、彼らがGrindrの株式の60%以上を保有し、そのほとんどを個人ローンの担保としていたことが、今回の事態を招いたとされています。
新たな所有構造とユーザーデータへの影響
現在、ゼージ氏とルー氏は、アブダビ政府が所有するMubadala Investment Companyが過半数を所有するFortress Investment Groupと、1株あたり約15ドル、総額約30億ドルでの買収資金調達について協議を進めている模様です。この非公開化が実現すれば、Grindrの所有構造は大きく変化することになります。
Grindrは、ユーザーの性的指向や位置情報など、極めて機密性の高い個人情報を扱うプラットフォームです。そのため、誰がアプリを所有し、どのようにデータが管理されるかは、ユーザーのプライバシーとセキュリティにとって極めて重要な問題となります。政府系ファンドが関与する投資グループによる買収は、データの取り扱いに関する透明性や、特定の国の影響を受ける可能性について、新たな懸念を引き起こす可能性があります。
事業の健全性と今後の展望
Semaforの指摘によると、Grindrの株価下落は、必ずしも事業のファンダメンタルズと一致しているわけではないようです。第2四半期の利益は25%増加しており、事業自体は堅調に推移しています。しかし、一部の役員交代や利益率の縮小に対する投資家の懸念も報じられています。
今回の非公開化の動きは、Grindrの経営安定化を目指すものと見られますが、同時にユーザーの信頼とデータの安全性をいかに確保するかが、今後のGrindrにとって最大の課題となるでしょう。新たな所有体制の下で、ユーザープライバシー保護へのコミットメントがどのように維持・強化されるか、セキュリティコミュニティは注視していく必要があります。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/13/grindrs-owners-may-take-it-private-after-a-financial-squeeze/