概要
トランプ政権のエネルギー省(DOE)は、バイデン前政権下で開始された主要なエネルギープログラムの一つを継続することを決定しました。これは、政権移行期間中に承認されたプロジェクトをキャンセルしてきたトランプ政権のこれまでの姿勢とは異なる異例の動きです。具体的には、5,000マイルに及ぶ送電線のアップグレードに対し、16億ドルの融資保証が最終決定されました。このプロジェクトは、インディアナ州、ミシガン州、オハイオ州、オクラホマ州、ウェストバージニア州における電力の流れを円滑にすることを目的としています。
AEPプロジェクトの詳細
この大規模なアップグレードは、米国最大の公益事業会社の一つであるアメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)が所有する送電線に焦点を当てています。プロジェクトでは、新たな送電ルートの追加ではなく、既存の送電線を新しい導体で再配線することで、より多くの電力を供給できるようにします。これはAEPの総ネットワークの約13%に相当します。この融資保証により、AEPは低金利を確保でき、少なくとも2億7500万ドルのコスト削減が見込まれており、最終的には顧客に利益をもたらすとされています。エネルギー長官のクリス・ライト氏は、この融資が「米国中西部地域の電力コストを確実に引き下げる」と述べています。
政治的背景と異例の決定
この融資保証は、トランプ大統領の就任直前のバイデン政権下で開始されました。トランプ政権はこれまで、選挙日から就任日までの間に承認されたプロジェクトをキャンセルする方針を示してきました。例えば、ミネソタ州の28ギガワットの新規発電容量(主に太陽光・風力)を支援する4億6700万ドルの助成金や、オレゴン州の再生可能エネルギープロジェクトを接続するための2億5000万ドルの助成金がキャンセル対象となっています。さらに、カリフォルニア州の電力網近代化に向けた6億3000万ドルの助成金も中止が検討されています。これらのプロジェクトがキャンセルされる中で、AEPの送電線アップグレードプロジェクトが継続される理由は不明であり、その決定の背景には注目が集まっています。
融資プログラムオフィスの役割
今回の融資は、2005年のエネルギー政策法に基づいて設立された融資プログラムオフィス(Loan Programs Office)から提供されます。このオフィスは、共和党によって「エネルギー優位性融資プログラム(Energy Dominance Financing Program)」と改称されています。歴史的に、このオフィスはクリーンエネルギーおよび製造プロジェクトに焦点を当ててきました。特筆すべきは、その融資の損失率が約3%と、民間セクターの貸し手と比較してはるかに低い水準を維持している点です。
エネルギー安全保障への影響
このAEPプロジェクトの継続は、中西部地域の電力供給の安定性と信頼性を高める上で重要な意味を持ちます。既存のインフラを最大限に活用し、電力網の混雑を緩和することで、地域のエネルギー安全保障が強化され、消費者への電力供給がより安定することが期待されます。政治的な変動にもかかわらず、重要なインフラプロジェクトが推進されることは、国家のレジリエンスにとって肯定的な兆候と見なせるでしょう。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/17/trump-doe-decides-to-keep-at-least-one-biden-era-energy-program/