Intel、AIチップ優先戦略を鮮明に:供給不足と製造課題が浮き彫りに

はじめに:Intelの戦略転換とPC市場の動向

2025年第3四半期の決算発表において、IntelはNvidia、Softbank、米国政府からの支援を受け、約2年ぶりの黒字を達成しました。PC業界は2021年以来最大の成長期を迎えると予測されていますが、Intelはこの好機を最大限に活かす準備ができていない現状が明らかになりました。同社は、AI分野への注力を最優先する戦略を鮮明に打ち出しています。

AIチップへの戦略的転換と供給への影響

IntelのCEOであるLip-Bu Tan氏とCFOのDavid Zinsner氏は、現在直面しているチップ供給不足が来年第1四半期にピークに達すると説明しました。この状況下で、同社はAIサーバーチップの供給を最優先し、一部のコンシューマー向けプロセッサ(エントリーレベルのクライアントパーツ)の供給を後回しにする方針を示しています。これにより、クライアントコンピューティンググループ(CCG)の売上は緩やかに減少する一方、データセンターおよびAIグループ(DCAI)は大幅な成長が見込まれています。

さらに、IntelはNvidiaやAMDに追随し、毎年新しいAI GPUをリリースする計画を発表しました。これはAIサーバー市場の巨大な需要に対応するためのものであり、IntelのゲーミングGPUの将来にどのような影響を与えるかは不透明です。

製造プロセスの課題と展望

次世代チップ「Panther Lake」については、今年中に1つのSKUのみが発売され、他の製品は2026年にかけて順次投入される予定です。Zinsner氏は、Panther Lakeが初期段階では「かなり高価な製品」になると示唆し、来年前半は既存の「Lunar Lake」チップを推進する方針を明らかにしました。

Intelは、18Aプロセスにおける歩留まりの低さに関する懸念を否定してきましたが、今回の決算発表では、供給に対応できるレベルではあるものの、適切な利益率を確保するには至っていないことを認めました。「許容できるレベルの歩留まり」は2026年、あるいは2027年になる可能性も示唆されています。

かつてIntelの象徴であった「tick-tock」戦略(チップの微細化と新アーキテクチャの交互導入)は、今回の発表で復活しないことが明確になりました。しかし、次期ノードである14Aプロセスのキャンセルは回避され、顧客の協力により「順調なスタートを切っており、この時点での18Aよりも性能と歩留まりの面で優れている」とTan氏は述べています。

市場への影響と今後の見通し

Intelは、利用可能な生産能力を最大化するため、顧客と緊密に連携し、価格設定や製品構成を調整して、供給可能な製品(Lunar Lakeなど)への需要をシフトさせる戦略を取るとのことです。また、Tan氏は「確約された外部需要」がない限り、さらなる生産能力への投資は行わないと強調しました。

18Aプロセスは「長寿命のノード」として、今後少なくとも3世代のクライアントおよびサーバー製品を支えることになります。この戦略的な転換と製造課題は、今後の半導体市場、特にAI分野におけるIntelの競争力と、広範なサプライチェーンの安定性に大きな影響を与えるでしょう。


元記事: https://www.theverge.com/tech/805652/intel-q3-2025-earnings-18a-panther-lake-ai-gpus-annual