AI市場の現状とセキュリティの展望:Elad Gil氏が語る勝者と未開拓分野

AI市場の予測不可能性と初期投資の洞察

著名なベンチャーキャピタリストであるElad Gil氏は、TechCrunch Disruptのステージで、AIがこれまでで最も予測不可能な技術ブームの一つであると述べました。Gil氏は2021年に生成AIへの投資を開始し、GPT-2からGPT-3への能力の飛躍が、この分野が極めて重要になるという確信を与えたと語っています。彼の初期の投資には、OpenAIやMistralのような基盤モデル開発企業に加え、Perplexity、Harvey、Character.ai、Decagon、Abridgeといったアプリケーション企業が含まれていました。

確立されたAI市場の「勝者」たち

Gil氏によると、AI市場の一部ではすでに明確な勝者が現れています。基盤モデルの分野では、Google、Anthropic、OpenAI、xAI、Meta、Mistralといった少数の企業がリーダーとして台頭しています。AI支援型コーディングの分野でも、AnthropicのClaude Code、OpenAIのCodex、AnysphereのCursor、CognitionのDevin(Windsurfを買収)などが先行しており、新規参入が困難な状況です。医療文字起こしではAbridgeが、顧客サポートではGil氏のポートフォリオ企業であるDecagonやOpenAI会長Bret Taylor氏のSierra、そしてSalesforceやHubspotといった既存の大手企業がAI機能を追加し、市場をリードしています。

セキュリティ分野を含む「未開拓」のAI市場

一方で、Gil氏はまだ「未開拓」で、誰にでもチャンスがあるAI市場も存在すると指摘しています。その中には、金融ツール(フィンテック)、会計、そして特に注目すべき「AIセキュリティ」が含まれます。これらの分野は、デフォルトで非常に興味深い市場であるものの、まだ明確なリーダーが定まっていない状況です。

Gil氏は、企業のAI戦略への関心の高まりから、新規AI市場が急速な収益を上げることがあるものの、それが必ずしも長期的な成功を意味するわけではないと警告しています。多くの企業が「試用段階」でAIソリューションを導入しているため、初期の急成長が「偽のシグナル」である可能性も指摘しています。しかし、法律AIスタートアップのHarveyのように、実際に機能している「本物」の成功例も存在し、2025年には数ヶ月で評価額が30億ドルから80億ドルへと急上昇しました。

AIセキュリティ市場への示唆

AIセキュリティが未開拓市場として挙げられたことは、セキュリティ業界にとって重要な示唆を与えます。AI技術の急速な進化と普及に伴い、AIシステム自体の脆弱性や、AIが悪用されることによる新たな脅威が増大しています。この分野は、AIの信頼性と安全性を確保するための革新的なソリューションが求められており、新規参入企業や既存のセキュリティベンダーにとって大きなビジネスチャンスとなるでしょう。企業がAI導入を進める中で、AIセキュリティは不可欠な要素となり、その需要は今後さらに高まることが予想されます。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/03/elad-gil-on-which-ai-markets-have-winners-and-which-are-still-wide-open/