a16z、多様な創業者支援ファンド「TxO」を一時停止し、スタッフを解雇

はじめに

著名なベンチャーキャピタルであるAndreessen Horowitz(a16z)は、長らくその名を馳せてきた「Talent x Opportunity(TxO)」ファンドおよびプログラムを一時停止すると発表しました。この決定は、プログラムに参加していた複数の創業者を含む関係者4名によって確認されています。TxOは、従来のベンチャーネットワークにアクセスできない創業者、特に女性やマイノリティを支援することを目的としていました。

TxOファンドの概要と実績

TxOファンドは、2020年にジョージ・フロイド氏殺害事件後の多様性支援の波の中で立ち上げられました。当初220万ドルのコミットメントで始まり、a16zの共同創業者ベン・ホロウィッツ氏とその妻フェリシア氏が最大500万ドルを追加で拠出しました。このプログラムは、創業者にテック業界のネットワークへのアクセス、16週間のトレーニングプログラム、そして非営利団体Tides Foundationが管理する寄付者助言基金を通じて17万5000ドルの投資を提供しました。これまでに、メディアブランドのBrown Girl Magazine、食品テックのMyles Comfort Foods、マタニティテックのVillieなど、60社以上の企業を支援してきました。

TxOは、その構造が従来の投資ファンドというよりも非営利団体に近いという批判も受けましたが、参加した創業者たちは、それが他に得られない貴重な支援と機会を提供したと述べています。昨年には、恵まれない創業者を支援する3つのテック系非営利団体に5万ドルの助成金を提供するプログラムも開始しました。

一時停止の理由と影響

TxOの参加者には、2025年10月16日にTxOを率いていたa16zのパートナー、コフィ・アムパドゥ氏からプログラムの一時停止を告げるメールが送られました。メールには、「TxOを立ち上げた際、その使命は明確でした。それは、文化を形成する企業を創造しているものの、典型的なシリコンバレーのネットワークやリソースにアクセスできない才能ある、決意の固いビルダーを支援することです」と記されています。そして、「その目的は変わっていませんが、私たちは既存のプログラムを一時停止し、その提供方法を洗練させます」と続けられています。

メールはさらに、a16zが「学んだすべてを適用し、a16zのより広範なアーリーステージ投資および企業構築戦略と統合することで、創業者を支援する方法を進化させる」と説明しています。a16zはTechCrunchに対し、プログラムが停止し、アムパドゥ氏が参加者にメールで通知したことを確認しました。また、アムパドゥ氏を除く少なくとも3人のTxOスタッフチームのメンバーも解雇され、10月末が最終週となったと報じられています。

広がるDEIへの影響

このTxOの一時停止は、テック業界のトップ企業が多様性、公平性、包摂性(DEI)に関連する以前の公約を撤回、削減、または再構築している時期と重なります。トランプ政権は、DEIを支援する企業に対し、法的および政治的な影響を及ぼす可能性を示唆しています。多くのスタートアップ業界関係者は、TxOを多様な才能のためのアクセラレーターと認識しており、その休止は、テック業界におけるDEIへのコミットメントの変化を象徴するものと見られています。

今後の展望

一方で、a16zはアクセラレーター型のスタートアッププログラムへの関心は依然として高いとされています。今年初めには、コホート卒業生に最大100万ドルの投資を約束する「Speedrun」というプログラムを立ち上げています。TxOの一時停止は、a16zが多様な創業者支援のアプローチを再考し、より広範な戦略に統合しようとしていることを示唆していますが、その過程でスタッフの解雇やプログラムの変更が生じることは、業界全体におけるDEIイニシアティブの不安定な現状を浮き彫りにしています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/03/a16z-pauses-its-famed-txo-fund-for-underserved-founders-lays-off-staff/