導入:EV税額控除の期限切れと自動車メーカーの対応
米国の自動車大手フォードとGMが、期限切れとなる7,500ドルの連邦EV税額控除を実質的に維持するため、異例の戦略を展開していることが明らかになりました。この動きは、EV販売の勢いを維持し、税額控除の終了による市場の冷え込みを防ぐことを目的としています。
異例のスキーム:リース割引で優遇措置を継続
Reutersの報道によると、両社はディーラーと協力し、年末まで顧客がEV税額控除を受けられるようにする短期プログラムを導入しています。このスキームは以下のように機能します:
- フォードとGMの金融部門が、税額控除の期限が切れる前に、ディーラーの在庫にあるEVを自社で購入します。
- その後、ディーラーはこれらの車両を顧客にリースし、7,500ドルの割引をリース価格に組み込みます。
これにより、9月30日に期限切れとなった税額控除が、実質的に年末まで継続される形となります。これは、政府の優遇措置に依存するEV市場の脆弱性を示すものとも言えます。
背景と目的:販売減速への懸念
この戦略の背景には、税額控除の終了がEV販売に与えるであろう深刻な影響への懸念があります。専門家は、控除がなくなればEV販売が急落すると予測しており、実際に7月と8月には、控除を求める駆け込み需要でEV販売が急増していました。フォードとGMは、この勢いを維持し、消費者の購買意欲を維持することで、EV市場の成長を支えたいと考えています。
IRSとの協議と潜在的リスク
フォードとGMは、この新プログラムを導入する前に、内国歳入庁(IRS)の当局者と協議を行っていたとReutersは報じています。これは、法的な側面での正当性を確保しようとする両社の姿勢を示しています。しかし、この戦略には潜在的なリスクも伴います。売れ残ったEVに対しては、フォードとGMが財政的な打撃を受ける可能性があります。また、この割引プログラムが年末以降も延長されるかどうかは不透明であり、今後の市場動向に注目が集まります。
対象車種
今回の税額控除の対象となっていた主なEVモデルは以下の通りです:
- フォード:F-150 Lightning
- GM:Chevy Equinox, Blazer, Silverado、Cadillac Lyriq, Optiq, Vistiq、GMC Sierra EV
(Mustang Mach-Eはバッテリー要件を満たさず、対象外でした。)
結論:市場変動への対応と今後の展望
今回のフォードとGMの動きは、EV市場が政府のインセンティブに大きく左右される現状と、自動車メーカーがその変動にどのように対応しようとしているかを示す好例です。市場の安定性と消費者の信頼を維持するための戦略的な判断として評価される一方で、その持続可能性と長期的な影響については、引き続き注視が必要です。