Google、次世代AIモデル「Gemini 3」発表:開発を変革する「Antigravity」とセキュリティへの影響

Google Gemini 3がAIモデル競争を加速

2025年11月18日、Googleは最新かつ最も先進的な基盤モデルである「Gemini 3」を正式リリースしました。Gemini 2.5のリリースからわずか7ヶ月という短期間での登場は、AI開発競争の激しさを如実に示しています。本モデルは、現在市場で最も有能なAIツールの一つとして、OpenAIのGPT 5.1やAnthropicのSonnet 4.5といった競合モデルと直接対峙します。

Googleのプロダクト責任者であるTulsee Doshi氏は、「Gemini 3では推論能力が大幅に向上しており、これまでにない深さとニュアンスで応答できる」と述べています。その推論能力は独立したベンチマークでも証明されており、一般的な推論と専門知識を測る「Humanity’s Last Exam」では、従来の最高記録だったGPT-5 Proの31.64を大きく上回る37.4という記録的なスコアを達成しました。また、ユーザー満足度を測定する人間主導のベンチマーク「LMArena」でもトップに立っています。現在、Geminiアプリは月間6億5000万人以上のアクティブユーザーを抱え、1300万人ものソフトウェア開発者がワークフローにGeminiモデルを組み込んでいるとのことです。

安全性への注力と「Deepthink」

Gemini 3のリリースに際し、Googleはより研究集約的なバージョンである「Gemini 3 Deepthink」も発表しました。こちらは、さらなる安全テストを経て、数週間以内にGoogle AI Ultraの購読者向けに提供される予定です。この「Deepthink」の存在と、徹底した安全テストの実施は、高度なAIモデルが社会に与える影響、特に潜在的なセキュリティリスクや倫理的課題に対するGoogleの慎重な姿勢を示唆しています。AIの能力が飛躍的に向上する一方で、その安全な運用と責任ある開発が、これまで以上に重要視されていることが伺えます。

注目の新機能:AI駆動型コーディングインターフェース「Antigravity」

Gemini 3の発表と同時に、Googleは「Google Antigravity」というGemini搭載の新しいコーディングインターフェースも公開しました。これは、WarpやCursor 2.0のようなエージェント型IDE(統合開発環境)と同様に、マルチペインでのエージェント型コーディングを可能にするものです。「Antigravity」は、ChatGPTのようなプロンプトウィンドウ、コマンドラインインターフェース、そしてコーディングエージェントによって行われた変更の影響を示すブラウザウィンドウを組み合わせて機能します。

DeepMindのCTOであるKoray Kavukcuoglu氏は、「エージェントはエディタ、ターミナル、ブラウザ全体で連携し、アプリケーションを可能な限り最善の方法で構築するのに役立つ」と説明しています。これは、AIが開発者のツールチェーン全体に深く統合され、コード生成からデバッグ、結果の視覚化までを一貫して支援する新しい開発パラダイムの到来を意味します。

「Antigravity」が提起するセキュリティ課題

AIが開発プロセス全体に深く関与する「Antigravity」のようなツールは、開発効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めている一方で、新たなセキュリティ上の懸念も提起します。

  • 自動生成コードの脆弱性: AIが生成したコードに、意図しない脆弱性が含まれる可能性があります。これらの脆弱性が発見されにくい形で埋め込まれるリスクも考慮する必要があります。
  • 広範なアクセス権限: 「Antigravity」がエディタ、ターミナル、ブラウザといった複数の環境にアクセスし、変更を加える能力を持つことは、もしエージェント自体が侵害された場合、システム全体に大きな影響を及ぼす可能性を意味します。これは、サプライチェーン攻撃の新たな経路となるリスクもはらんでいます。
  • 悪用される可能性: 高度なAIコーディングアシスタントが悪意ある行為者によって利用された場合、より洗練されたマルウェアの生成や、システムの脆弱性悪用が加速する恐れがあります。

これらの潜在的なリスクに対し、開発者はAI生成コードの厳格なレビュー、エージェントのアクセス制御の強化、そしてセキュリティスキャンの自動化など、多層的なセキュリティ対策を講じる必要が今後ますます高まるでしょう。

今後の展望

Google Gemini 3と「Antigravity」の登場は、AIがソフトウェア開発の現場にもたらす変革の大きさを物語っています。開発効率の向上と革新的なアプリケーションの創出が期待される一方で、AI駆動型ツールに内在するセキュリティリスクへの適切な対処が、これからのAI時代における最重要課題の一つとなるでしょう。企業や開発者は、これらの最先端ツールを導入する際に、そのメリットとリスクを慎重に評価し、強固なセキュリティフレームワークを確立することが求められます。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/18/google-launches-gemini-3-with-new-coding-app-and-record-benchmark-scores/