はじめに:データセンターが電力網の安定性を脅かす
データセンターの爆発的な成長が、今冬の電力網の安定性を脅かす可能性があると、業界監視機関が警鐘を鳴らしています。北米電力信頼度協議会(NERC)が今週発表した報告書によると、今冬の北米全体の電力需要は昨年よりも2.5%高い20ギガワットに達すると予想されており、近年1%以下だった増加率から大きく上昇しています。
この需要急増の主要な要因はデータセンターであり、特に中大西洋岸、米国西部、米国南東部といったデータセンター開発が集中する地域で顕著です。NERCの信頼性評価マネージャーであるマーク・オルソン氏は、「データセンターが成長の大部分を牽引している」と述べています。
各地で高まる停電リスク
報告書は特にテキサス州でのデータセンター拡張に言及し、「供給不足の継続的なリスクに寄与している」と指摘しています。テキサス州では約5年前、厳しい寒波の際に大規模な停電が発生し、天然ガス発電所が凍結により停止し、燃料供給が途絶えるという苦い経験があります。
NERCは、バッテリー貯蔵システムが大幅に強化されたことで、今年のテキサス州の状況は2021年2月ほど悲惨ではないだろうと見ています。これらのバッテリーは、ガス火力発電所が計画通りに稼働できない場合に電力を供給し、また小規模な変動により迅速に対応できます。しかし、テキサス州が完全に安全というわけではありません。
データセンターと電力供給の新たな課題
テキサス州に導入されているバッテリーの多くは、一度に数時間電力を供給する設計であり、人々が帰宅する夕方など、需要が短時間でピークに達する状況には適しています。しかし、NERCが指摘するように、データセンターは終日継続的に電力を消費します。
もし長期間にわたる寒波が州を襲った場合、データセンターを含むすべての顧客に電力を供給するためにバッテリーを十分に充電し続けることは、より困難になるでしょう。NERCは、今冬に大きな嵐がなければ、どの地域の電力網にも問題はないと予測していますが、過去5年間で4回の厳しい嵐が発生していることを強調しています。このような状況下では、電力会社は電力の輸入、大口顧客への使用制限要請、そして最終手段として計画停電(ローリングブラックアウト)を実施せざるを得なくなる可能性があります。
セキュリティへの影響と今後の展望
電力網の安定性低下は、データセンターの運用に直接的な脅威をもたらします。大規模な停電は、デジタルサービスの停止、データの損失、ビジネス継続性の阻害といった重大な結果を招く可能性があります。現代社会がデータセンターに深く依存していることを考慮すると、電力供給の安定性は今や重要なセキュリティ課題です。
極端な気象イベントと増加する電力需要は、インフラの脆弱性を浮き彫りにしています。企業は、電力供給リスクに対する対策を強化し、事業継続計画にこれらのリスクを組み込むことがますます重要となるでしょう。
