Google Scholar LabsがAIを導入:科学研究の信頼性評価における新たな課題

Google Scholar Labs、AIを活用した新しい研究検索を発表

Googleは、詳細な研究質問に答えるために設計された、AIを活用した新しい検索ツール「Scholar Labs」のテストを発表しました。この新ツールは、ユーザーのクエリから主要なトピックと関係性をAIが特定し、従来のGoogle Scholarとは異なるアプローチで研究論文を提示します。例えば、あるデモでは脳コンピューターインターフェース(BCI)に関する質問に対し、Scholar Labsは非侵襲的信号である脳波の研究や主要なアルゴリズムについて議論する論文を検索結果として表示しました。

従来の評価指標からの脱却と新たな課題

Scholar Labsの注目すべき点は、従来の「良い」研究と「そうでない」研究を区別するために広く用いられてきた引用数やジャーナルのインパクトファクターといった一般的な評価指標のフィルターを欠いていることです。Googleの広報担当者であるLisa Oguike氏は、Scholar Labsが論文の引用数やジャーナルのインパクトファクターに基づいて結果を並べ替えたり制限したりすることはないと述べています。Googleは、インパクトファクターや引用数は研究分野によって異なり、特定の研究質問の文脈で適切な値を推測することはほとんどのユーザーにとって困難であると説明しています。また、これらの指標で制限すると、学際的な分野や最近発表された重要な論文を見逃す可能性があるとも主張しています。

バンダービルト大学メディカルセンターの神経学准教授であるMatthew Schrag氏は、引用数やインパクトファクターといった指標は「論文の質を評価する粗い尺度」であり、「論文の社会的な文脈をより多く語るもの」であるとGoogleの主張に同意しています。

AIによる研究評価における信頼性とセキュリティの重要性

しかし、このAI主導のアプローチは、科学研究の信頼性における新たな懸念も提起します。アルツハイマー病を研究するMatthew Schrag氏は、過去に**公開された科学論文における疑わしいデータ**を指摘してきた科学捜査官の一人です。Schrag氏のようなデータ捜査官や科学コミュニティ全体の厳密な監視により、**改ざんされた画像**や**捏造されたデータ**が原因で、評判の高いジャーナルから論文が撤回されたり、ノーベル賞受賞者による訂正、連邦政府による調査が行われたりといった事例が発生しています。

AIがこのような**信頼性の問題**にどう対処するのかは極めて重要です。AIが「良い」科学研究を選別する際、**捏造や不正を見抜く**能力がどれほどあるのか、あるいは逆に誤った情報を増幅させるリスクはないのか、という点が**セキュリティ上の重要な課題**となります。Schrag氏は、AIを活用した検索には科学エコシステムにおいて役割があるとしつつも、研究の厳密性に関する基準を理解し、研究がそれに合致しているかを判断する必要があると強調しています。そして、最終的に**科学的な影響力を持つものを見極めるのは科学者自身の責任**であり、**アルゴリズムが「高品質なもの」の最終的な判断者となるべきではない**と警鐘を鳴らしています。


元記事: https://www.theverge.com/news/823213/google-scholar-labs-ai-search