元MrBeastストラテジストがクリエイター向けAIツール「Palo」を発表:アイデア出しと分析を強化

AIがクリエイターの救世主となるか?

ショートビデオコンテンツの爆発的な需要が高まる中、Instagram、Facebook、YouTube、TikTokといったプラットフォームで日々数十億もの動画が視聴されています。これはクリエイターにとって大きな機会であると同時に、より多くのコンテンツを継続的に生み出し、関連性を保つための絶え間ないプレッシャーでもあります。特に、AIが生成したコンテンツが急増する現代において、オリジナリティと効率性の両立が課題となっています。

Palo AIとは

元MrBeastのショートビデオコンテンツ責任者であり、クリエイターのジェイ・ネオ氏は、AIがこの課題を解決する鍵だと考えています。彼は、Palantirの元エンジニアであるシバム・クマール氏、クリエイターのハリー・ジョーンズ氏と共に、クリエイター向けのAIプラットフォーム「Palo」を立ち上げました。Paloは、クリエイターが自身のコンテンツで何が機能しているかを理解し、新たなコンテンツアイデアを生み出すのを支援することを目指しています。

Neo氏の経験がPalo開発の原点に

ネオ氏は18歳でMrBeastに加わり、視聴者維持率の向上に貢献しました。彼は視聴者がなぜ動画を視聴し続けるのか、なぜ離脱するのかを深く分析し、「視聴者維持率グラフと、視聴者がなぜ滞在したり離れたりするのかを解明することに夢中だった」と語っています。彼の代表的な功績は、パリでバゲットを買いに行く動画で、これはMrBeastチャンネル全体で18億回以上の視聴を記録しました。この成功体験から、ネオ氏はコンテンツの構成と分析の重要性を痛感しました。

2023年にMrBeastを離れた後、ネオ氏は「Creaky」ブランドで複数のチャンネルを立ち上げ、月間10億回以上の視聴回数を達成しました。この経験を通じて、彼は自身の洞察をクリエイター向け製品にするべきだとアドバイスされ、2024年初頭にPaloの共同創設者たちと共に開発に着手しました。

Paloの主要機能

Paloアプリは、主に以下の3つの機能を核としています。

  • AI駆動のアイデア出しと計画ツール: クリエイターはチャットボット形式のインターフェースを通じて、コンテンツに関する質問をしたり、特定のフォーミュラに基づいたスクリプト作成を依頼したりできます。ビジュアル中心のクリエイター向けには、異なるフックを持つストーリーボードを生成することも可能です。
  • 高度な分析機能: 統合されたアカウントを通じて、Paloはクリエイターのショートビデオを分析し、何が成功しているか、何がそうでないかについての洞察を提供します。CTOのクマール氏によると、Paloは多様なモデルを組み合わせて、フック、視聴者の感情、興味のあるトピック、オリジナリティ、関連する検索ワードなどに関するデータツリーを抽出します。
  • コミュニティ機能: 現時点ではまだ初期段階ですが、クリエイター同士がメッセージを交換し、交流できる場を提供します。

クマール氏は、Paloの推論エンジンがこれらの一次データポイントを、トップクラスのLLM(大規模言語モデル)の組み合わせで階層的に集約し、クリエイターの「ペルソナ」を構築すると説明しています。これにより、クリエイターの好みやスタイルを完全に把握した、個別化されたサポートが可能になります。

市場投入と資金調達

Paloはテスト段階で約40のクリエイターと協力し、総勢100万人以上のユーザーにリーチしました。現在、同社は10万人以上のフォロワーを持つクリエイター向けにサービスを一般公開しており、月額250ドルからの料金体系を提供しています。

Paloは、Peak XV(旧Sequoia India)のSurgeをリードインベスターとし、NFXおよび個人投資家からの参加を得て、380万ドルの資金調達に成功しました。Peak XVのマネージングディレクターであるラジャン・アナンダン氏は、「AIが、世界の最高のクリエイターから深く学ぶ、アイデンティティを意識した新しいカテゴリーのシステムを可能にしている」と述べています。

AIとクリエイターの未来

Paloの登場は、AIとクリエイターコミュニティ間の緊張が高まる時期と重なります。TikTok、Meta、GoogleなどのプラットフォームはAIを活用したツールを導入していますが、MrBeastのような著名なクリエイターは、AIが業界に与え得る負の影響について言及しています。

ネオ氏は、Paloがクリエイターを成功に導く方向へ「後押し」するツールであると強調しつつも、優れた動画は最終的にはクリエイターの「直感」から生まれることを認めています。彼は、コメディアンが舞台で新しいネタを試す際に観客の反応から学び、次のパフォーマンスに活かすアナログを引用し、AIがクリエイターに同様の利点をもたらすと信じています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/24/former-mrbeast-content-strategist-is-building-an-ai-tool-for-creator-ideation-and-analytics/