マイクロソフトの開発者がAIをどのように活用しているか

AIが開発にもたらす変革

AIはまだすべての仕事を一変させているわけではないが、開発者には大きな影響を与えている。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは今年初め、同社の「一部のプロジェクト」では最大30%のコードがAIによって書かれていることを明らかにした。筆者は、マイクロソフトの開発者がAIをどのように利用しているかについて、情報源や幹部社員に話を聞いた。一部の従業員は、AIエージェントが人間の仕事を完全に代替できるかについては懐疑的であり、自動化されたエージェントの誤りを修正するのは開発者の役割だと感じている。

マイクロソフト社内におけるAI導入の現状

マイクロソフトのCoreAIチームでApps & Agentsプラットフォームの製品を統括するCVP、アマンダ・シルバー氏は、「開発者の労力が多い部分、非効率な部分に注目したい」と語る。マイクロソフト社内には、新規プロジェクトから20年以上稼働しているレガシーコードベースまで、10万を超えるコードリポジトリが存在する。「想像しうるあらゆるプログラミング言語、アーキテクチャ、ライフサイクルステージがあり、これは多くの顧客を反映している」とシルバー氏は述べている。

GitHub Copilotとその効果

5月には、マイクロソフトはコーディングエージェントをGitHub Copilotに直接組み込み、開発者が作業を割り当てられるようにした。シルバー氏によると、開発者は単純なタスクで平均30分、中程度のタスクで半日以上、複雑なタスクで2週間を節約しているという。マイクロソフトの開発者は、バグ修正やアプリケーション・サービスのドキュメント改善といった時間のかかる単調なタスクにAIを活用している。「さらに、プルリクエストへの貢献数など、エージェント機能によって完了されたアクションも注視している」とシルバー氏は言う。マイクロソフトは、エンジニアリングチームの91%がGitHub Copilotを使用していると述べている。

具体的なAI活用事例

  • XboxチームはCopilotのアプリモダナイゼーションエージェントを使用し、コアXboxサービスを.NET 6から.NET 8にアップグレード。これにより、手動での移行作業が88%削減され、数ヶ月かかる作業が数日に短縮された。
  • マイクロソフトのDiscovery and Quantumチームは、Copilotエージェントを使用してJavaアプリを最新バージョンに移行し、非推奨APIの自動検出、修正提案、セキュリティ脆弱性の特定により、必要な労力を削減した。
  • エンジニアリングシステムに関する質問に答える「ES Chat」エージェントは、従来の検索方法と比較してタスクあたり46分の時間を節約している。
  • SRE(Site Reliability Engineers)は、システムやアプリケーションの障害に対応する際にもAIエージェントを活用しており、すでに10,000時間以上の運用時間を節約している。

AI導入の課題と懸念

匿名を希望する一部の従業員は、マイクロソフトの幹部が開発者のAI利用頻度に満足していないと感じている。社内では開発者にあらゆる場面でAIをまず使用させる動きがあるが、その導入は必ずしも自然ではないと聞いている。シルバー氏も「意識改革には、ある程度の意図的な関与が必要だ」と認めている。情報源からは、同社の一部ではAIツールの全体的な採用率がはるかに低いことが示唆されており、これはStack Overflowで毎日AIツールを業務で使用していると答えた開発者の51%に近い数字だ。筆者は、マイクロソフトのCoreAI部門のエンジニアと話したが、彼らは自律型AIエージェント、特に若手開発者が割り当てられる可能性のある種類のプロジェクトを取り上げることについて懸念を抱いている。業界内、そしてマイクロソフト社内でも、若手開発者の役割が消滅し、経験豊富な開発者がAIツールの出力の世話をしなければならなくなるという真の懸念がある。

マイクロソフトが描くAIの未来

シルバー氏は、AIが開発者にとって退屈なタスクを単にオフロードし、その代わりに創造性に集中できるという楽観的な見方をしている。「開発者は、数ヶ月にわたるコード保守移行作業に割り当てられるためにこの業界に入ったわけではない」とシルバー氏は言う。「彼らは最先端に立ち、創造し、革新したいと考えている。これらは、AIにオフロードして、創造のプロセスに戻りたいと願う種類の作業だ。」

その他の注目すべきAI関連動向

  • PowerToysのAdvanced PasteにおけるオンデバイスAI: マイクロソフトは、PowerToysのAdvanced Pasteツールをアップグレードし、Foundry LocalツールまたはオープンソースのOllamaを通じてリクエストをルーティングできるようにした。これにより、AIモデルをデバイスのNPUで実行できるようになり、一部のAdvanced Paste機能を利用するためにクラウドクレジットを購入する必要がなくなる。
  • Fara-7B: エージェント型小型言語モデル: マイクロソフトは、Phi小型言語モデルの成果に基づいてFara-7Bをリリースした。Fara-7Bは、テキストベースの応答ではなく、コンピューターインターフェースを制御し、ユーザーのためにコンピューターを使用するように設計された、同社初のエージェント型小型言語モデルである。
  • GitHub CopilotにおけるClaude Opus 4.5の導入: マイクロソフトは、Anthropicの最新AIモデルであるClaude Opus 4.5をGitHub Copilotに迅速に採用した。初期テストでは、Opus 4.5が「社内コーディングベンチマークを上回り、トークン使用量を半分に削減した」ことが示されている。マイクロソフトは、Anthropicの最新モデルが「コード移行とコードリファクタリングにも優れている」と述べている。

元記事: https://www.theverge.com/tech/831379/microsoft-developer-ai-usage-stats-notepad