Mark Cubanを射止めたAIスタートアップClipbook
AIを活用して企業のメディア露出を監視するプラットフォーム「Clipbook」が、Mark Cuban氏を含む共同主導による300万ドルのシードラウンド資金調達を発表しました。この異例の投資は、創業者Adam Joseph氏がほとんど期待せずに送った一本のコールドメールから始まりました。
Joseph氏は2023年にClipbookを立ち上げ、年間経常収益(ARR)100万ドルまで自己資金で成長させました。投資家を探す準備ができたと感じた彼は、「世界のトップ5メディア投資家」のリストを作成。メディアネットワークの設立、人気番組「Shark Tank」への出演、書籍執筆など多岐にわたる活動で知られるMark Cuban氏がそのリストの筆頭でした。
コールドメールから始まった巨額投資
2024年後半のある夜、Joseph氏は勇気を振り絞り、リストアップした投資家全員に1ページの投資ピッチをコールドメールで送りました。なんと、Cuban氏だけが返信してきたのです。多忙を極めるCuban氏ですが、自身のメールには目を通しており、常に次のビジネスチャンスを探していると言います。
「私は文字通り、何千万ドルもの資金をメールからの投資で動かしてきた。その多くはユニコーン企業になった」
とCuban氏はTechCrunchに語り、Clipbookに返信した理由を明かしました。
AIネイティブな差別化戦略
投資を決める前に、Cuban氏はJoseph氏に一連のテストを課しました。Cuban氏からの最初のメールは「彼が尋ねうる最も懐疑的な20の質問」だったとJoseph氏は振り返ります。これに対し、Joseph氏は淀みなく回答し、Cuban氏を感銘させました。
Cuban氏はさらに、自身のオンライン薬局「CostPlus Drugs」に関するレポートを作成するようJoseph氏に求め、Clipbookの製品性能を実証させました。この分野にはSprinklr、Sprout Social、Emplify、Hootsuiteなど多くの競合が存在しますが、Joseph氏はClipbookが「AIネイティブ」である点で差別化されていると主張します。
- 単なるキーワード検索ではなく、言葉が使われる文脈を理解する
- 「cost」と「drugs」という単語が使われているからといって、「CostPlus Drugs」と誤認しない
- 「Adam Joseph」という人物とClipbookの創業者を区別できる
- ポッドキャストにおける音声や動画コンテンツの参照元も分析可能
Joseph氏自身もボストンコンサルティンググループでのPR業務を通して、メディア感情分析の難しさを痛感した経験があり、この製品を開発しました。
成功の証明と今後の展望
Joseph氏が迅速に作成したレポートは、Cuban氏が求める関連性の高い情報を「的確に捉えていた」とCuban氏は評価しました。特に、以前は知られていなかった薬局給付サービスに関するポッドキャストの対話を発掘したことには、Cuban氏も深く感銘を受けました。
数日間の交渉を経て、Cuban氏はタームシート(投資条件書)を送ることに同意。2025年初頭にシードラウンドの第一弾がクローズし、その後数ヶ月で他の投資家も加わりました。Clipbookは現在、Weber ShandwickやJoseph氏のかつての雇用主であるボストンコンサルティンググループを含む200社を顧客に抱え、成長を続けています。
