Apple、新AI責任者に元Google・MicrosoftのAmar Subramanya氏を任命 – 低迷するAI戦略の立て直しなるか

新AI責任者Amar Subramanya氏が就任

Appleは、長年AI部門を率いてきたジョン・ジャナンドレア氏の後任として、アマール・スブラマニャ氏を新たなAI責任者に任命しました。スブラマニャ氏はMicrosoftの幹部を務め、その前にはGoogleで16年間勤務し、直近ではGemini Assistantのエンジニアリングを指揮していました。競合他社のAI戦略を熟知する彼の採用は、AppleのAI部門にとって大きな転換点となることが期待されています。

Apple Intelligenceの「期待外れ」な現状

この人事異動は、AppleのAI戦略が直面している課題の深刻さを浮き彫りにしています。2024年10月にローンチされた「Apple Intelligence」は、「期待外れ」から「危機的」とまで評価されるなど、その道のりは順調ではありませんでした。特に、通知要約機能では以下のような誤報が問題視されました。

  • BBCは、ユナイテッドヘルスケアCEO殺害容疑者に関する虚偽の報道(容疑者が自殺したという内容)を巡り、2度にわたりAppleに苦情を申し立てました。
  • ダーツ選手が決勝戦前に優勝したと誤って報じるなど、事実と異なる情報が生成される事例が報告されました。

Siriの再開発における苦難と遅延

さらに、Siriの抜本的な再開発も大きなつまずきを見せています。Bloombergの調査によると、ソフトウェア責任者のクレイグ・フェデリギ氏でさえ、発売予定のわずか数週間前にテストした際、多くの主要機能が動作しないことに愕然としたといいます。これにより、Siriのローンチは無期限に延期され、AIアシスタントの搭載を期待していたiPhone 16購入者から集団訴訟が提起される事態に発展しました。ジャナンドレア氏は今年3月にはSiriの統括権限を、また秘密裏に進められていたロボティクス部門の管理からも外されていたと報じられています。

AI部門の組織的機能不全

Bloombergの調査は、AppleのAI部門における組織的な機能不全を詳細に描写しています。AIチームとマーケティングチーム間のコミュニケーション不足、予算のミスマッチ、そしてリーダーシップの危機が指摘され、一部の従業員はジャナンドレア氏のグループを揶揄して「AI/MLess」と呼ぶほどでした。さらに、多くのAI研究者がOpenAI、Google、Metaといった競合他社へと流出しており、人材確保も大きな課題となっています。

Apple独自のAI戦略と直面する課題

Appleは、競合他社が大規模なAIデータセンターに巨額の投資を行っているのに対し、独自のApple Siliconチップを使用してユーザーデバイス上でAIタスクを処理するという、プライバシーを重視したアプローチを採用しています。より複雑なリクエストについては「Private Cloud Compute」を介して処理し、データは一時的に処理された後、直ちに削除されるとされています。しかし、この哲学には明確なトレードオフが存在します。オンデバイスモデルはデータセンターで稼働する大規模モデルと比較して小規模で能力が劣る傾向があり、ユーザーデータ収集への消極的な姿勢は、研究者がライセンスデータや合成データでのモデル訓練を余儀なくされ、競合他社のような大量の実世界データを利用できないという課題を抱えています。スブラマニャ氏には、これらの課題を克服し、AppleをAI分野で巻き返すという明確な使命が課せられています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/01/apple-just-named-a-new-ai-chief-with-google-and-microsoft-expertise-as-john-giannandrea-steps-down/