シカゴ・トリビューン、Perplexityを著作権侵害で提訴:AIとRAGの法的境界線が焦点に

訴訟の背景:Perplexityの著作権侵害疑惑

米国の有力紙であるシカゴ・トリビューンが、AI検索エンジンPerplexityに対し、著作権侵害を主張する訴訟を提起しました。TechCrunchが報じたところによると、この訴訟はニューヨークの連邦裁判所に提出されました。

トリビューン側は、Perplexityが同社のコンテンツを無断で利用し、その結果を「逐語的に」提供していると主張しています。これに対しPerplexity側は、10月中旬にトリビューンから問い合わせを受けた際、「トリビューンの著作物でモデルを訓練したことはない」と回答しましたが、法廷文書では「非逐語的な事実の要約を受け取る可能性はある」と述べたとされています。

RAG技術とペイウォール回避が争点に

今回の訴訟で特に注目されるのは、AIが「幻覚」を起こすのを防ぐために正確なデータソースのみを使用する手法であるRetrieval Augmented Generation(RAG)が争点となっている点です。トリビューンは、Perplexityが同社のRAGシステム内で、無許可でスクレイピングしたコンテンツを使用していると主張しています。

さらに、Perplexityの「Comet」ブラウザが新聞社のペイウォールを回避し、購読者限定の記事の詳細な要約を提供していることも問題視されています。

広がるAI関連の法的紛争

今回のPerplexityに対する訴訟は、AIモデルがコンテンツをどのように利用すべきかという、より大きな議論の一部です。メディアニュース・グループとトリビューン・パブリッシング傘下の17のニュース出版物は、今年4月にOpenAIとMicrosoftを提訴しており、さらに9社が11月に追加で訴訟を起こしています。これらの訴訟はいずれもモデルの訓練資料に関するものです。

Perplexity自身も、RedditやDow Jonesといった企業から同様の訴訟を受けている状況です。また、Amazonは先月、AIブラウザでのショッピング機能に関して、Perplexityに中止勧告書を送付しています。

クリエイターがAIモデルの訓練における著作物の利用に関して数多くの訴訟を起こす中、今回のPerplexity対シカゴ・トリビューンのケースは、RAGのようなAI技術の法的責任が今後、裁判所によってどのように判断されるかを示す重要な試金石となるでしょう。


元記事: https://techcrunch.com/2025/12/04/chicago-tribune-sues-perplexity/