PhonePe、消費者向けPincodeアプリの提供を終了
Walmart傘下のフィンテック大手PhonePeは、消費者向けEコマースアプリ「Pincode」の提供を終了し、事業の焦点をオフライン小売業者向けのB2Bサービスへと移行することを発表しました。この動きは、同社がインドの競争の激しいオンライン小売市場からのさらなる撤退を意味します。
クイックコマース市場での苦戦が背景に
PhonePeの創業者兼グループCEOであるSameer Nigam氏は、消費者向けクイックコマースアプリの運営が、中小小売業者へのコアな注力から「注意散漫になっていた」と説明しています。PhonePeは、店舗が「運用の効率化、利益率の向上、視認性の確保」を実現できるよう支援することを主要な目標としています。
Pincodeは2023年4月にインド政府主導のOpen Network for Digital Commerce (ONDC) 上で鳴り物入りでローンチされ、食料品、医薬品、食品、電化製品、家庭用品などを近所の店舗から提供していました。しかし、わずか1年余りでほとんどのカテゴリーから撤退し、クイックコマースモデル(10分配送)にシフトしていました。
競合他社がダークストアを利用するのに対し、Pincodeは地元のキラナ(小型店)や小売店を活用していました。しかし、このアプローチも混雑したクイックコマース市場で足場を築くには至らず、最終的にサービス終了に至りました。PhonePeは以前にも2019年にスーパーアプリ「Switch」を立ち上げていますが、これも同様にEコマース事業での苦戦を示唆しています。
B2Bソリューションへの集中と今後の展望
PincodeのCEOであるVivek Lohcheb氏は、この戦略的決定の一環として、Pincodeチーム全体のリソースをインド全土のオフラインビジネス向けB2Bソリューションの構築と拡大に集中させると述べています。PhonePeは既に、在庫・注文管理ツールやその他のERPソフトウェアを中小企業に提供しており、一部のカテゴリーでは直接調達および補充サービスも行っています。
この事業転換は、PhonePeがFlipkartからのスピンオフから約3年を経て、インドでの株式公開を準備している時期と重なります。同社は2026年半ばの上場を目指し、9月には機密事前申請ルートを通じてインド証券取引委員会に草案を提出しています。また、同社はインドの統一決済インターフェース(UPI)における支配的な決済アプリとしての地位を超えて成長する方法を模索しています。
まとめ
PhonePeのPincodeアプリ終了は、インドのEコマース市場における競争の激しさと、クイックコマースモデルの難しさを改めて浮き彫りにしました。同社は今後、オフライン小売業者向けのテクノロジーソリューションに特化することで、新たな成長軌道を描こうとしています。これは、単なるEコマースからの撤退ではなく、実店舗とデジタル技術を融合させる新たな戦略的アプローチと言えるでしょう。
