ディズニー、OpenAIとの巨額提携で生成AIコンテンツ「Sora」を導入へ – 品質と著作権の懸念浮上

ディズニーとOpenAI、10億ドルの戦略的提携

エンターテイメント大手のディズニーとAI研究企業のOpenAIが、10億ドル規模の大型提携を発表しました。この契約により、OpenAIの先進的なテキスト-ビデオ生成AI「Sora」の利用が可能となり、ユーザーはディズニーが所有する数百もの人気キャラクターを用いて、独自のショート動画クリップを作成できるようになります。作成されたコンテンツの一部は、Disney+プラットフォームの特設セクションで共有される予定です。

ディズニーのCEOであるボブ・アイガー氏は、この提携を「業界にとって重要な瞬間」と位置づけ、顧客が「ディズニーキャラクターや物語とより豊かで個人的な方法で繋がる」機会を提供すると述べています。また、生成AIを通じて「ストーリーテリングのリーチを拡大しつつ、クリエイターと作品を尊重・保護する」という意向も示しました。

生成AI「Sora」の品質と「スロップ」への懸念

しかし、今回の提携に対しては、コンテンツの品質や倫理的な側面から強い懸念が表明されています。批評家たちは、この動きがDisney+を「インスピレーションのないゴミ(uninspired garbage)」で満たすことになると危惧しています。

  • Sora AIの現状の限界: 現在のSora AIは、短いながらも動画を生成できるものの、生成されるコンテンツは「奇妙で、一貫性に欠ける」傾向があり、プロフェッショナルなエンターテイメント作品に利用するには不向きだと指摘されています。
  • ユーザー生成コンテンツの性質: ディズニーは、Soraの現在の限界を踏まえ、まずは「バイトサイズのユーザー生成コンテンツ」に焦点を当てる計画です。これにより、ファンは企業IPを自由に活用してコンテンツを作成できる一方で、ユーザーが「顧客でありながら無給の従業員」として機能するビジネスモデルへの懸念も提起されています。

著作権問題と過去の事例からの教訓

注目すべきは、ディズニーを含む複数のスタジオが生成AI企業に対して無許可のIP学習を理由に著作権侵害訴訟を起こしている最中であることです。そのような状況下で、ディズニーが自社IPの利用料をOpenAIに支払うという今回の提携は、矛盾をはらんでいるとの見方も存在します。

また、過去の事例として、人気ゲーム「フォートナイト」におけるAI搭載のダース・ベイダーNPCが、ユーザーの働きかけによって不適切な発言を生成した例が挙げられています。OpenAIが「不適切なコンテンツ生成を防ぐための措置」を講じていると説明しているにもかかわらず、ユーザーが回避策を見つける可能性は否定できず、ディズニーキャラクターを使った「オリジナルクリエイターが意図した品質とはかけ離れた」コンテンツが大量に生成されるリスクが指摘されています。

俳優・声優の権利と「魂のない」試み

ディズニーは、Sora AIがキャラクターの声優や俳優の声を再現することを許可しない方針を表明しています。これは、俳優や声優の権利を保護する措置と捉えられがちですが、記事ではこれを「魂のない試み」と批判的に見ています。この方針が、ディズニーがオリジナルキャストに再度の報酬を支払う必要なく、人気キャラクターの「見慣れた顔」をデコンテキスト化して視聴者に提示できる手段として利用される可能性を指摘し、芸術性とクリエイターへの真の尊重が欠如していると疑問を呈しています。


元記事: https://www.theverge.com/ai-artificial-intelligence/842992/disney-openai-sora-ai-slop-partnership