ニューヨーク州AI安全法案「RAISE Act」、親たちが知事に署名を要求

AI安全法案「RAISE Act」を巡る攻防

ニューヨーク州で審議されている画期的なAI安全法案「責任あるAI安全性・教育法(RAISE Act)」に対し、150名以上の親たちがキャシー・ホークル知事への署名を求める書簡を送付しました。この法案は、大規模AIモデルの開発企業に安全計画の策定と透明性のある事故報告を義務付けるもので、親たちはこれを「最小限の防衛線」と位置づけ、現状での成立を強く訴えています。

RAISE Actの主な内容

RAISE Actは、今年6月にニューヨーク州上院および下院で可決されましたが、ホークル知事がその内容を大幅に書き換える案を提示したと報じられ、論争を呼んでいます。この法案の主な内容は以下の通りです:

  • 大規模AIモデル開発企業に対し、安全計画の策定と安全に関する事故報告の透明性確保を義務付ける。
  • 州司法長官への大規模安全事故開示と安全計画の公開を求める。
  • フロンティアモデルのリリースを、「壊滅的な損害の不合理なリスク」を生じる場合に禁止する。
  • 「壊滅的な損害」とは、100人以上の死傷、化学・生物・放射性・核兵器の生成に起因する10億ドル以上の損害、または「意味のある人間の介入なしに機能し、人間が犯した場合に特定の犯罪に該当する」AIモデルによるものと定義される。

この法案の対象は、年間数億ドルを投じる非常に大規模な企業のみに限定されています。

業界からの強い反発

しかし、多くのAI企業はこの法案に強く反対しています。Meta、IBM、Intelなどが参加する「AI Alliance」は、RAISE Actが「実現不可能」であるとして「深い懸念」を表明しました。また、Perplexity AIやAndreessen Horowitzが支援する親AIスーパーPAC「Leading the Future」は、法案共同提案者であるアレックス・ボアーズ州議会議員を標的とした広告を展開しています。テック企業側は、カリフォルニア州のSB 53法案と同様に、より企業に有利な内容への変更を求めているとされています。

親たちの切実な訴え

ParentsTogether ActionとTech Oversight Projectが共同でまとめた親たちの書簡には、AIチャットボットやソーシャルメディアの害によって子供を失ったという署名者の声も含まれています。彼らは、テック企業が「アルゴリズムに基づいたソーシャルメディアプラットフォームを透明性、監視、責任なしに推し進めて以来、若者への広範な被害(精神衛生、感情の安定、学業への影響を含む)が広く記録されている」と強調し、今回の法案を「最小限の防衛線」と呼び、法制化の必要性を強く訴えています。

過去のパターンと今後の展望

書簡は、「大手テック企業によるこれらの基本的な保護への反対は、これまでも見てきた回避と逃避のパターンに酷似している」と指摘しています。この動きは、若者への影響が懸念される中、AI技術の安全性をどのように確保していくかという、社会全体の課題を浮き彫りにしています。ニューヨーク州知事の最終的な判断が注目されます。


元記事: https://www.theverge.com/ai-artificial-intelligence/844062/parents-call-for-new-york-governor-to-sign-landmark-ai-safety-bill