スターリンクと中国衛星がニアミス、宇宙衝突の懸念高まる

低軌道で発生した危ういニアミス

先週、スペースX社のスターリンク衛星と、中国が新たに展開した衛星が低軌道上で極めて危険なニアミスを起こしました。この出来事は、宇宙空間における衝突のリスク増大、特に衛星の位置情報共有の重要性について、改めて警鐘を鳴らすものとなっています。

報じられたところによると、中国の衛星はスターリンク衛星「STARLINK-6079」(識別番号56120、高度560km)からわずか200メートルの距離まで接近しました。これは、宇宙での衝突を招きかねない極めて危険な距離です。

SpaceXの主張と宇宙データ共有の課題

スペースXのスターリンク・エンジニアリング担当副社長であるマイケル・ニコルス氏は、今回のニアミスについて、中国の衛星運用事業者が位置データ(エフェメリス)を共有しなかったことに原因があると指摘しています。

  • スターリンク衛星は、経路上の物体を回避するために自動的に軌道を調整する能力を持っています。
  • しかし、この回避システムは、回避すべき物体が「既知」である場合にのみ機能します。
  • 2025年上半期だけでも、スターリンクの宇宙船は144,000回以上もの回避行動を実施しており、その運用密度は極めて高いことが伺えます。

ニコルス氏は、「衛星運用事業者が自社の衛星のエフェメリスを共有しない場合、宇宙で危険な接近が発生する可能性がある」と述べ、データ共有の欠如が事故のリスクを高めることを強調しました。

CAS Space側の反応

問題の衛星を打ち上げた中国の商業宇宙企業CAS Spaceは、ニコルス氏の指摘に対し、X(旧Twitter)上で反応を示しました。同社は現在詳細を確認中であるとしつつ、自社の打ち上げについては「地上の宇宙認識システムを使用して、既知の衛星やデブリとの衝突を回避するように打ち上げ窓を選択している」と説明しました。

また、CAS Spaceは、今回のニアミスがペイロード分離から約48時間後に発生したとして、「その時点までに打ち上げミッションはとっくに終了していた」と述べ、自社の責任を限定しようとする姿勢を見せました。

低軌道の過密化とケスラーシンドロームの脅威

今回のニアミスは、低地球軌道(LEO)の過密化という、より広範な問題の一端を浮き彫りにしています。現在、低軌道では衛星やデブリを含む24,000以上の物体が追跡されており、これは2019年以降76%も増加しています。

そして、この増加傾向は今後も続き、現在の予測では、今世紀末までには低軌道に最大70,000個の衛星が運用される可能性があるとされています。その大半は、民間企業や政府機関が展開する宇宙インターネットコンステレーションによるものです。

このような状況が懸念されるのは、「ケスラーシンドローム」と呼ばれる理論的シナリオが発生する可能性があるためです。これは、一度衝突が起きると、その破片がさらなる衝突を引き起こし、連鎖的に衛星が破壊され、最終的に低軌道全体が使用不可能になるというものです。今回のニアミスは、そのような破局的な事態が現実味を帯びてきていることを示唆しています。


元記事: https://www.theverge.com/news/844502/starlink-and-chinese-satellites-nearly-collided-last-week