新たな事業戦略:EVシフトからの転換
米自動車大手フォードは、電気自動車(EV)向けバッテリー生産能力の一部を、新たに立ち上げるバッテリー貯蔵事業に転用すると発表しました。この新事業は、データセンターや電力網への電力供給を目的としており、同社のEV戦略における重要な転換点となります。
フォードはこれまで大型EV製造へのシフトを進めてきましたが、その計画を見直し、余剰となるバッテリー生産能力を新たな製品ラインに活用する方針です。これにより、同社は急成長するエネルギー貯蔵市場への参入を目指します。
安価なLFPバッテリーを活用し、2027年より出荷開始
フォードは、より安価なリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用し、バッテリー貯蔵システムを構築します。これらのシステムは2027年に出荷を開始する予定で、年間20ギガワット時(GWh)の生産能力を目指し、今後2年間で約20億ドルを投資する計画です。
新事業の推進にあたり、フォードは既存のケンタッキー州の工場設備を転用します。中国のCATLからライセンス供与を受けた技術を用いてLFPバッテリーを製造し、バッテリーエネルギー貯蔵システムモジュールや20フィートのDCコンテナシステムを生産する方針です。
競争激化するバッテリー貯蔵市場とフォードのターゲット
バッテリー貯蔵市場には、テスラがすでに四半期あたり約10GWhを供給しているほか、ゼネラルモーターズも家庭用および商業用バッテリー貯蔵製品を展開しており、競争が激化しています。フォードのテクノロジー・プラットフォーム・プログラムおよびEVシステム担当副社長であるリサ・ドレイク氏によると、新事業の「主要な機会」は商業用電力網顧客であり、次いでデータセンター、将来的には家庭用貯蔵製品も提供するとしています。
ドレイク氏は、「市場調査の結果、これらの顧客の多くがLFP角形セルを使用したコンテナシステムを求めていることが明らかになった」と述べ、CATLとのライセンス契約とフォードの長年にわたる大規模製造経験が、この自然な隣接事業への参入を後押ししたと説明しています。
ミシガン州のバッテリー工場計画への影響
2026年にLFPバッテリーの生産開始を予定しているミシガン州マーシャルのBlueOval Battery Park Michiganの計画は継続されます。同工場はフォードの次世代中型EVトラック向けにバッテリーを供給しますが、今回の新事業に伴い、住宅用エネルギー貯蔵ソリューション向けに小型アンペアアワーセルも製造するよう調整されるとのことです。
このミシガン工場の計画は、2023年2月に35億ドルの投資が発表され、その後一時的に建設が中断。同年11月には生産能力が当初計画の43%減となる20GWhに縮小されるなど、いくつかの変遷を経てきました。
