フォード、EV戦略を転換:ハイブリッドとエネルギー貯蔵に注力へ

フォード、EV戦略を大胆に転換

米自動車大手フォードは、電気自動車(EV)への大規模な投資戦略を見直し、今後はハイブリッド車(HV)とエネルギー貯蔵システムに重点を置くことを発表しました。これは、EV販売の伸び悩みと多額の損失に直面した結果、事業戦略を大きく変更するものです。

EV事業の苦境と戦略見直し

フォードはかつてテスラを超えるEV販売を目指していましたが、バッテリー材料の高騰と需要の減退により、EV部門「フォード・モデルe」は過去2年間で120億ドル以上の損失を計上。特に11月にはEV販売が60%以上減少するなど、厳しい状況が続いていました。

これを受け、同社は「利益への道筋がない大型EVへの数十億ドルの支出」から、より収益性の高い分野へと資金を再配分することを決定。具体的には、トラック、バン、ハイブリッド車、航続距離延長型EV(EREV)、そして手頃な価格のEVに加え、エネルギー貯蔵システムという新たな機会に投資すると述べています。

ハイブリッドとEREVが新たな柱に

フォードは、2030年までに世界の販売台数の50%を、ガソリン・電気ハイブリッド車、EREV、および小型で手頃な価格のバッテリーEVが占めるようになると予測しています。現在、この割合はわずか17%です。また、ハイブリッドおよびEV事業が2029年までに黒字化することを目指しています。

製品面では、初代F-150ライトニングの後継として、最大700マイル(約1,126km)の航続距離を持つ航続距離延長型F-150ライトニングを導入する計画です。EREVは、電気モーターで駆動し、バッテリーは外部充電が可能ですが、小型の内燃機関を搭載し、バッテリーを充電することで航続距離を延長します。これにより、従来のEVユーザーが抱える航続距離への不安(特にトラックユーザーの牽引能力に関する懸念)を解消することを目指します。

エネルギー貯蔵事業への参入と雇用への影響

EV戦略の転換は、フォードのサプライチェーンと雇用にも影響を与えます。同社は韓国のバッテリーメーカーSK Onとの提携を解消し、ケンタッキー州のBlueOval SKバッテリー工場を完全に所有することになります。この工場は、EV用バッテリーではなく、データセンター向けのエネルギー貯蔵システムを製造するために再利用される予定です。

この再編により、一時的に1,600人の従業員が職を失う可能性がありますが、数年後には最大2,100人の新たな雇用が創出される見込みです。

フォードは、これまでEV投資のために開発してきたプリズム型リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを、データセンター向けのエネルギー貯蔵システムに活用する計画です。将来的には住宅向け製品への拡大も視野に入れていますが、まずは商業顧客を優先するとしています。


元記事: https://www.theverge.com/news/844813/ford-hybrid-erev-f150-energy-storage-jobs