スポーツ観戦の未来を切り拓くPeripheral Labs
カナダを拠点とするスタートアップPeripheral Labsは、自動運転車のセンサー技術を応用し、スポーツ観戦を劇的に変える立体映像(ボリュメトリックビデオ)システムを開発しています。特に若年層(Gen Z)を中心に減少傾向にあるライブスポーツ視聴の課題に対し、同社は臨場感あふれる新しい視聴体験を提供することで、スポーツリーグや放送局がファンとのエンゲージメントを深める手助けをします。
自律走行車の知見をスポーツへ
2024年にKelvin Cui氏とMustafa Khan氏によって設立されたPeripheral Labsの核となる強みは、両氏の自動運転車開発における豊富な経験にあります。彼らはトロント大学のドライバーレスカーチームで数々の賞を獲得し、Cui氏はTeslaでシャシーシステムのソフトウェアエンジニアとして、Khan氏はHuaweiで研究員としてキャリアを積んできました。共同創設者のCui氏は、Khan氏の3D再構築研究をホッケー観戦に応用するアイデアからPeripheral Labsが生まれたと語ります。「まるでビデオゲームの中にいるような」自由な多角的な視点での観戦を可能にすることが、彼らの出発点でした。
革新的な技術アプローチ
ボリュメトリック生成自体は新しい技術ではありませんが、Peripheral Labsは最新のAIモデルとコンピュータービジョンの進歩により、この技術が一般への普及準備が整ったと確信しています。彼らは自動運転車で培ったロボティクス知覚と3Dビジョンの概念をスポーツのビデオ再構築に応用。これにより、従来100台以上必要だったカメラをわずか32台にまで削減することに成功し、システム導入のコストと運用上のオーバーヘッドを大幅に削減できると主張しています。同社は、ハードウェアコストを最小限に抑えつつ、プラットフォームの多年度契約を通じてサービス提供を目指しています。
高度なソフトウェアプラットフォームの機能
Peripheral Labsのソフトウェアプラットフォームは、自動運転車のセンサーに似た独自のセンサー技術を活用し、選手の生体力学的データや統計データを提供します。これにより、放送局やファンは、ボールを持った選手だけを追跡したり、プレー中の重要な瞬間をフリーズして様々な角度から確認したりするなど、視聴体験を自由にコントロールできます。さらに、選手の指の動きから膝や足首の屈曲まで、様々な関節の動きを計測できるため、コーチは選手の体のポジショニングや柔軟性に関する深い洞察を得て、パフォーマンス向上に役立てることが可能です。
資金調達と今後の展望
同社はKhosla Venturesが主導し、Daybreak Capital、Entrepreneurs First、Transpose Platformが参加するシードラウンドで360万ドルを調達しました。Entrepreneurs FirstのパートナーであるJoe Ros氏は、スポーツ関連スタートアップへの投資は慎重になりがちだが、Peripheral Labsは「エンターテイメント」としての側面も強く、スポーツコンテンツへの需要は「永遠」であると評価しています。現在10名のエンジニアを擁するPeripheral Labsは、プラットフォームとハードウェア開発に注力して人員を増強し、コスト削減、システムの遅延短縮、3D再構築の解像度向上を目指します。同社は具体的な提携先をまだ発表していないものの、北米のいくつかのチームやリーグと協議を進めており、市場ではArcturus Studiosなどの競合も存在しています。
