プラットフォーム依存からの脱却:YouTuberの新たな収益戦略
YouTubeはクリエイターにとって生計を立てるための巨大なプラットフォームですが、多くのYouTuberが広告収入やブランド契約への依存度を減らしています。この変化の背景には、いくつかの理由があります。まず、広告収入は予測不可能であり、YouTubeのポリシー変更によって収益が予期せず消失するリスクがあるためです。
YouTuberはもはや単なるコンテンツクリエイターではなく、垂直統合型のメディア企業へと進化しています。彼らはプラットフォームに依存した収益の不安定性を認識し、アルゴリズムの変更やポリシーの変動に左右されないよう、製品ライン、実店舗、消費者ブランドなど、並行するビジネスを構築しています。これらの副業は、YouTubeチャンネルよりも速く、より持続可能に成長しているケースも少なくありません。
成功事例に見る多様化の力
MrBeast:積極的な事業展開で収益の安定化を図る
- Jimmy Donaldson(MrBeast)は、2018年のグッズ販売から始まり、現在ではスナックブランド「Feastables」を含む巨大なビジネスポートフォリオを築いています。Feastablesは、発売から72時間で1,000万ドル以上の売上を記録し、現在ではYouTubeコンテンツやPrime Videoの「Beast Games」よりも収益性が高いとされています。2024年にはFeastablesが約2億5000万ドルの収益と2000万ドル以上の利益を上げた一方で、彼のメディア事業は約8000万ドルの損失を出しており、事業の多角化が財務的な安定性に貢献していることが伺えます。
- その他の事業には、食品ブランド「Lunchly」、おもちゃライン「MrBeast Lab」、「MrBeast Burger」、分析プラットフォーム「Viewstats」などがあります。さらに、彼はTikTokの米国事業買収を試み、現在はモバイル仮想ネットワーク事業者(MVNO)の設立も計画しています。
Emma Chamberlain:コーヒーブランドで持続的成長を追求
- 2016年にティーンのVloggerとして名を馳せたEmma Chamberlainは、2019年にコーヒーブランド「Chamberlain Coffee」を立ち上げ、飲料業界で成功を収めています。
- 2023年には、レディ・トゥ・ドリンクの缶入りラテを導入し、約2000万ドルの収益を達成しました。2025年までに収益が50%以上増加し、3300万ドルを超えると予測されており、2026年には黒字化を目指しています。
Logan Paul:多角化の成功と課題
- Logan Paulは、エネルギー飲料ブランド「Prime」で急速な成功を収め、2023年には12億ドル以上の売上を記録しました。これは、ほとんどのコンテンツクリエイターが広告収入から得る額をはるかに上回ります。
- しかし、Primeはその後、売上減少、高カフェイン含有量に対する規制当局の監視、ビジネスパートナーからの訴訟など、多くの課題に直面しています。彼の別の事業である「Maverick Apparel」は2020年に3000万ドルから4000万ドルの収益を上げています。
Ryan’s World:子供向けコンテンツから商品展開へ
- Ryan Kajiは、おもちゃのレビュー動画で人気を博し、現在では約4000万人の登録者を抱えています。
- 彼は、主要小売店で販売されるおもちゃやアパレルのラインを通じてブランドを拡大し、2020年には2億5000万ドル以上の収益を上げたと報じられています。さらに、TV番組や教育コンテンツを提供するアプリも立ち上げています。
Rosanna Pansino:料理コンテンツから出版・商品化へ
- Rosanna Pansinoは、ポップカルチャーやゲームをテーマにしたレシピで知られる人気YouTuberです。
- 彼女はYouTube以外にも、料理本を数冊出版し、自身の「Nerdy Nummies」ブランドを拡大しています。また、Amazonなどの小売店でベーキングツールも販売しています。
Michelle Phan:ビューティー業界での起業
- Michelle Phanは、メイクアップチュートリアルで有名になり、ビューティーサブスクリプションサービス「Ipsy」を共同設立しました。また、自身のメイクアップライン「EM Cosmetics」も持っています。
Huda Kattan:ブランドの主導権を確保
- Huda Kattanは、2013年に世界的に認知されるビューティーブランド「Huda Beauty」を設立しました。
- 2017年にはプライベートエクイティファームに少数株式を売却しましたが、ブランドのビジョンと経営方針の衝突から、2024年6月にその株式を買い戻しました。これは、事業の主導権とビジョンを維持するための重要な戦略的決定であり、年間数億ドルの売上を誇るブランドの安定的な成長に寄与しています。
セキュリティニュースとしての教訓
このYouTuberたちの動向は、デジタル時代のビジネスにおけるセキュリティとレジリエンスの重要性を示唆しています。単一のプラットフォームや予測不可能な収益源に依存することは、大きなビジネスリスクを伴います。
彼らの事例は、多様な収益源を確保し、独自のブランドと事業を構築することが、アルゴリズムの変更や市場の変動といった外部要因からビジネスを保護し、長期的な安定性を確保するための不可欠な戦略であることを明確に示しています。また、Huda Kattanの事例のように、事業の主導権を自ら握ることも、ブランドの持続的な成長とセキュリティにとって極めて重要です。
