ICEの覆面執行官問題:なぜ誰も止められないのか?

覆面をした法執行官への懸念

米国の移民税関執行局(ICE)の職員が覆面をして職務を遂行する行為が、国民の間で大きな議論を呼んでいます。国民は一般的に、覆面をした法執行官に対して強い不信感を抱いており、その理由として説明責任の欠如法執行機関への信頼の低下、そして治安上の危険性が挙げられます。覆面をしていることで、誰が警察官で誰がそうでないのかを区別することが困難になり、市民の安全が脅かされる事例も報告されています。

州議会と連邦議会の対応

カリフォルニア州では、覆面を禁止する「No Secret Police Act」と、法執行官に身元特定手段の着用を義務付ける「No Vigilantes Act」が可決されました。しかし、国土安全保障省(DHS)は憲法上の理由を盾にこの法律の差し止めを求め、訴訟を起こしています。同様の反覆面法案は、全国の他の州議会でも提出されており、メリーランド、バーモント、ワシントン、ジョージアなどの州で新たな法案が導入されています。連邦議会でも同名の「No Secret Police Act」や「VISIBLE Act」が提案されていますが、共和党が多数を占める両院では可決される見込みは低いとされています。

ICE側の主張と批判

ICEは、職員が顔を覆う理由として、身元特定(doxxing)や殺害予告の増加を挙げています。国土安全保障省のウェブサイトでは、ICE職員への殺害予告が8000%、暴行が1300%増加したと主張していますが、その証拠はX(旧Twitter)のぼやけたスクリーンショットや、軽微な怪我の写真が大半であり、説得力に欠けるとの批判が上がっています。専門家は、このような数字の増加が覆面を正当化する理由としては弱いと指摘しています。

法的な課題と憲法の優位性

カリフォルニア州の「No Secret Police Act」は、連邦政府の活動に対して州がどの程度影響を与えられるかという、憲法の優位条項(Supremacy Clause)という大きな法的課題に直面しています。ある法学者は、この法律が憲法上無効であることは「明らか」だと述べている一方で、別の専門家は「既存の判例では、覆面禁止が明確に禁止されているわけでも、明確に許可されているわけでもない」と、より楽観的な見解を示しています。しかし、この問題の法的な不確実性自体が、良識への侮辱であると記事は指摘しています。ICEが覆面をすることが合法であるだけでなく、カリフォルニア州がそれを阻止しようとすることが違法となる可能性すらある状況です。

法執行機関内部からの懸念

驚くべきことに、警察官自身も覆面使用に対して懸念を表明しています。国際警察署長協会(International Association of Chiefs of Police)は、覆面使用に反対する決議を採択しており、その代表者はNPRのインタビューで、顔を覆う行為は「警察の正当性を損なう」と述べています。彼らは「民主主義社会における2025年の警察活動において、顔を覆うことはほとんどの場合不適切である」と強く主張しています。

現状と今後の展望

2025年1月以前は、ICE職員は通常、「ICE」または「ICE POLICE」の記章と見えるバッジ、番号を着用していました。しかし、その慣行は変更されました。カリフォルニア州は、覆面や身元特定手段を着用しない慣行が、職員へのリスクを軽減するという証拠はDHSによって提示されていないと反論しています。記事は、カリフォルニア州の覆面禁止法が不安定な法的立場にあることは、「事態が深刻に狂っている」ことの強力な指標であると結論付けています。最終的に、もしこの法律が裁判で維持されたとしても、民主主義を救うには不十分であり、もし打ち破られた場合、「バックアップのためのバックアップ」は存在しないと警告しています。この問題は、ITニュースの観点からも、デジタル時代における透明性、説明責任、そして個人のプライバシーと公共の安全のバランスという重要なテーマを提起しています。


元記事: https://www.theverge.com/policy/867202/ice-mask-ban-no-secret-police-california