NIHにおけるリーダーシップ人事の政治化が深化:科学的自律性への懸念

NIHにおけるリーダーシップの政治化が深化

新たな大統領政権の発足に伴い、連邦政府機関の約4,000の役職が任命される中、米国国立衛生研究所(NIH)では伝統的に政治的介入が少ないとされてきたリーダーシップ人事に大きな変化が見られます。**通常、科学的専門家が主導してきた研究所長の選任プロセスに、政治的な影響力が増大している**ことに対し、現職および元職員から懸念の声が上がっています。

歴史的背景と従来の慣行

NIHは、国の主要な生物医学研究機関として、長年にわたり強力な超党派の支持を受けてきました。2000年代初頭以降、連邦雇用記録によると、NIHの職員数約17,500人に対して、政治任用者は通常わずかでした。これは、科学者が政府の介入を最小限に抑えつつ、研究資金の提供と実施を監督すべきであるという長年の主張を反映したものです。NIHを構成する27の研究所・センターの所長選任には、**職員科学者と外部の専門家が主要な役割を果たし、強力な役職の選定がホワイトハウスの直接的な監視から大部分で免れていました。**

トランプ政権下での変化と懸念の拡大

しかし、トランプ政権下でこの状況は一変しました。政権はNIHにおける政治任用者の数を大幅に増加させ、以前は公務員が占めていた役職に政治任用者が就任するケースが見られます。例えば、NIH長官の首席補佐官には元共和党議会スタッフが、NIAIDの最高執行責任者にはマイケル・アレン氏が任命されましたが、アレン氏の任命は公式発表もなく、経歴情報も公開されていません。

さらに、**27の研究所・センター所長の採用プロセスも大きく変更されました。** 2025年春には、NIAIDのトップを含む5人の所長が解雇または行政休暇に入れられ、後に全員が解任されました。2025年9月には国立精神衛生研究所の選考委員会が一時解散・再招集され、10月には副大統領の親友が国立環境衛生科学研究所の所長に、**前例のない形で外部からの選考プロセスなしに任命されました。** 12月末と1月初めには、さらに2つの主要研究所の所長が退任を発表し、空席ポストは計15に上っています。

これらの変化は、**政権がディレクター人事により大きな政治的支配を及ぼそうとしている**という憶測を呼んでいます。元NIH科学者のマーク・ヒステッド氏は、「選考委員会に外部委員を含めることは、政治化を防ぐ上で極めて重要だ」と述べ、この慣行がNIHの「80年にわたる目覚ましい科学的成功」に貢献してきたと強調しています。

議会の反応と将来への影響

議会もこの状況に注目しており、現在の歳出法案には、NIHに対し**「長年の慣行である外部科学者と関係者の選考プロセスへの参加を維持する」**よう求める文言が盛り込まれています。また、コロラド州選出の民主党議員ダイアナ・デゲット氏は、NIHにおける政治任用者の数を制限することで、「NIHを政治的干渉から保護する」法案を提出しました。

ジョージタウン大学の政治学者マーク・リチャードソン氏は、政党間での特定の機関の役割に関する意見の不一致が、政権による任命を通じた管理強化の度合いと相関関係にあると指摘しています。これまで超党派の支持を得てきたNIHのような機関にも、**政治的対立が拡大している**と見ています。

元NIH助成金担当責任者のマイク・ラウアー氏は、こうした変化には「国民の意思に機関がより対応するようになる」という利点がある一方で、**「短期的な思考、不安定な予算、専門知識や能力の喪失」**という潜在的な欠点も伴うと警告しています。


元記事: https://arstechnica.com/science/2026/02/at-nih-a-power-struggle-over-institute-directorships-deepens/