ロボットバリスタとの初対面
かつてコーヒーショップでバリスタとして働いていた筆者は、ロボットが作るコーヒーに対して懐疑的な目を向けていました。しかし、シアトルを拠点とするArtly社が開発したロボットバリスタ「Jarvis」を体験し、その印象は大きく変わりました。
Jarvisは、高級アパートのロビーや、観光地の店舗、CESの会場などで展開されており、筆者はローズラテやカプチーノなどいくつかの飲み物を試しましたが、その品質は「予想を上回るほど良い」ものでした。
Jarvisの技術と能力
Artlyのロボットバリスタは、ただの自動販売機ではありません。カスタマイズされたLa Marzoccoエスプレッソマシンと連携し、人間のバリスタが行う一連の動作を模倣します。
- カップを取り、ポルタフィルターをグラインダーからエスプレッソマシンへ、そしてまた戻す。
- ラテアートを注ぐ。
- 豆の挽き具合や抽出の開始は自動化されており、複雑な操作は不要。
- AIがリアルタイムで調整を行い、「ポルタフィルターにコーヒー粉がない」などの状況判断も音声で伝える。
特筆すべきは、Artlyが米国コーヒー選手権の優勝者であるJoe Yang氏の動きをJarvisに学習させている点です。これにより、ロボットは特に難しいとされるミルクのスチーム処理においても、人間のような繊細な技術を再現しています。完璧にスチームされたミルクは「濡れたペンキ」のような見た目で、それは静かで滑らかな工程で生み出されます。
自動化がもたらす変化と課題
筆者は自身のバリスタ経験から、ロボットバリスタの「人間らしさの欠如」について深く考察しています。Jarvisは二日酔いになることも、遅刻することも、労働組合を結成することもなく、常に安定したパフォーマンスを提供します。企業側から見れば、予測可能で信頼性が高く、管理が容易な存在です。
しかし、コーヒーショップが単に飲み物を提供する場所以上の意味を持つ場合、ロボットはその役割を完全に代替できるのでしょうか。筆者は、コーヒーショップが「コミュニティの物理的な現れ」であり、「人間性を提供する場所」であると語ります。
ロボットバリスタの未来
Artlyは、既存のバリスタの仕事を奪うのではなく、これまでバリスタがいなかった場所に新しい機会を創出することを目指しています。例えば、Mujiの店舗やテスラ工場、あるいは深夜の駅や空港ラウンジなど、「人間のバリスタがいない場所」や「利便性が最優先される場所」での導入が進んでいます。
これらの場所では、ロボットバリスタの効率性と一貫性が高く評価されるでしょう。しかし、ダウンタウンの多くのコーヒーショップが賑わいを見せる中で、Artlyの店舗が常に閑散としているという筆者の観察は、人間との交流や「人間味」を求める顧客体験の価値を示唆しています。
ロボットが優れたラテを提供できるとしても、人間が提供する温かさや偶発的な出会い、そしてコミュニティ感覚は、まだロボットには再現できないものです。技術の進化とともに、コーヒーショップの役割も多様化していく中で、人間とロボットが共存する新しい形が模索されていくことでしょう。
元記事: https://www.theverge.com/tech/871350/artly-robot-coffee-jarvis-seattle
