『Civilization VII』の現状と「Test of Time」アップデート
人気のストラテジーゲームシリーズ最新作『Civilization VII』は、その発売から約1年が経過する中で、一部のプレイヤーから「シリーズの伝統から逸脱している」との厳しい評価を受けていました。特に、ゲームプレイの中核に影響を与えるいくつかの変更点に対して、コミュニティから強い反発が寄せられていたのです。
こうしたフィードバックに応えるべく、開発元のFiraxis Gamesは、この春に大規模なアップデート「Test of Time」をリリースすることを発表しました。このアップデートでは、不評だった変更点の見直しが行われ、初期リリース時のゲームデザインが大きく刷新される予定です。Ars Technicaのインタビューに応じた、フランチャイズのクリエイティブディレクターであるEd Beach氏とエグゼクティブプロデューサーのDennis Shirk氏は、今回の変更の意図と、プレイヤーからの反発に対するチームの解釈、そしてシリーズの将来像について語りました。
論争の核心:ゲームの中核要素への変更
発売当初、『Civilization VII』にはバグ、バランス調整の課題、そして一部UI機能(都市接続ビューやホットシートモードなど、これらは今後のアップデートで対応予定)の不足といった問題が見られました。しかし、最も大きな論争の的となったのは、多くのプレイヤーがシリーズの「核」と考えていた要素からの逸脱でした。
Shirk氏は、「IVやVからVIへは、非常に似た体験を提供してきました。しかし今回は、プレイヤーに新しいものを提供したかったのです」と述べ、伝統を破った変更の意図を説明しました。例えば、『Civ VII』では任意の歴史上のリーダーと文明を組み合わせることができ、さらにゲームの途中で、初期に選択した文明から別の文明に切り替えることが必須となっていました。Beach氏はこのシステムについて、「ローマからノルマン、そして大英帝国へと移行するのは自然に感じられるが、全てのプレイヤーにとってそうではない」と認識しており、プレイヤーが特定の文明の文化セットと共に成長していくという「没入感」が損なわれたことへの反響が予想以上に大きかったと語っています。
「Test of Time」による文明の連続性への回帰
「Test of Time」アップデートでは、この主要な変更点の一つにメスが入ります。プレイヤーは、ゲームの全3時代を通して単一の文明でプレイするオプションを選択できるようになります。各文明には「全盛期」が設定され、その時代に最も強力な特性を発揮します。他の時代では、既存の特性を一部維持しつつ、その時代に適した文化ツリーを獲得し、さらに他の文明のユニークなユニットやインフラを利用できる新しいシステムが導入されます。
また、プレイヤーが既存の文明に留まることを選択した場合、AIの指導者も同様に文明を変更せずにプレイを継続します。これにより、ゲーム開始時の設定に縛られることなく、プレイヤーのプレイスタイルに合わせて柔軟にゲームを進めることが可能になります。
勝利条件と「レガシーパス」の刷新:より自由なゲームプレイへ
今回のアップデートでは、勝利条件のシステムと、賛否両論を呼んだ「レガシーパス」も大幅に見直されます。ベースゲームでは最終時代(現代)まで勝利への直接的な行動が遅れていましたが、「Test of Time」では最初の時代(古代)から勝利に向けた進捗を開始できるようになります。さらに、2番目の時代(探検)でも、状況次第では勝利を収めることが可能になるとのことです。
勝利条件は引き続き4種類ですが、新たな文脈に合わせて再考されます。文化勝利は「遺産、偉業、祝典などの組み合わせ」で、軍事勝利は「都市の征服」、経済勝利は「資源、金銭的建造物、工場、財宝の輸送隊などの要素」を通じて達成されます。科学勝利はこれまで通り「宇宙開発競争」に焦点を当てます。
特に重要なのは、「レガシーパス」の概念が完全に廃止され、代わりに新たな「Triumphs(功績)」システムが導入される点です。Firaxisは、これにより、従来のタイトルに似た「サンドボックス」的な自由度の高いゲームプレイを目指しています。プレイヤーは、文化、軍事、経済、科学、外交、拡張といった6つの指導者属性に関連する幅広い功績の中から、自身の目標を選択できます。功績を達成すると即座に報酬が得られるか、次の時代への移行時に役立つカードを獲得できます。
Beach氏はこのシステムについて、「時代を通じた経路というよりも、目標の星座のようなもので、その中から4つか5つの指針となる星を選ぶイメージです」と説明しています。これにより、プレイヤーはより多様な方法で成功を目指せるようになります。また、このTriumphsシステムは、モッダーが容易にゲームに追加できるように設計されていることも特筆すべき点です。将来的には、特定のプレイスタイルに特化した「Triumphセット」の導入も検討されているとのことです。
Sid Meierの「33-33-33ルール」を超えた革新
これらの大規模な変更は、『Civilization VII』独自の要素を維持しつつ、これまでのシリーズ(VやVI)のプレイヤーを満足させることを目的としています。シリーズの生みの親であるSid Meier氏は、続編開発において「新タイトルの33%は前作のシステムを維持し、33%は既存システムを大幅に改善し、残りの33%は全く新しいシステムやメカニクスであるべき」という有名な「33-33-33ルール」を提唱していました。
Beach氏によれば、開発チームは当初、このルールを大幅に超える変更を提案しており、「どのシステムを更新するかを数値的に算出し、ルールを逸脱していることを示して、いくつかのシステムはそのまま残すよう説得する必要がありました」と振り返っています。結果的に、『Civ VII』は「新しいアプローチにやや重きを置きすぎた」ものの、取り組むべき喫緊の課題があったと述べています。
なぜ『Civilization VII』は大きく変わったのか
Beach氏とShirk氏は、なぜ『Civilization VII』がこれほど大きく変化したのかについても説明しました。その背景には、前作『Civ VI』の長期にわたる開発サイクル(約11年間)がありました。Beach氏は、「『Civ VII』の開発に入る前に、これまでで最も時間をかけたポストモーテム(事後分析)を行いました」と語り、全てのシステムについて良い点と悪い点を徹底的に洗い出したといいます。
彼らが取り組もうとしたのは、「終盤の組み合わせ爆発」という問題でした。これは、以前のCiv作品のプレイヤーが、ゲーム終盤になると管理すべき都市やユニットが膨大になり、マイクロマネジメントが煩雑になるという感覚を指します。Beach氏は、「多くのプレイヤーがゲームを最後まで終えず、途中で飽きてしまうというデータがありました」と述べ、ゲーム終盤の「作業化」を防ぐことを目指しました。また、ゲームをよりモジュール化し、拡張性を高めることで、発売後の新しいシステムの設計や追加を容易にすることも狙いの一つでした。
開発プロセスの進化:プレイヤーフィードバックの早期導入
Firaxisは、『Civ VII』の反響を受けて、新しいメカニクスやシステムの開発プロセスにおいて、プレイヤーフィードバックをより早期に取り入れるための新たな試みを行っています。以前から存在していた少人数の外部テストチーム「Frankenstein Group」は、パブリッシャーである2Kが主導するワークショッププログラムによって、より多くのコミュニティメンバーを巻き込む形に拡大されました。
Shirk氏は、これは『Civ V』や『Civ VI』の時代とは大きく異なるアプローチだと説明します。『V』の時代にはアップデート後、Redditやファンサイトの反応を見るのが主なフィードバック収集方法でした。『VI』ではデータ収集(テレメトリー)も導入されましたが、依然としてフォーラムの確認が主だったといいます。また、非AAAゲームで一般的な「早期アクセス」モデルについても、「絶対ないとは言えない」と将来的な可能性を示唆しました。
シリーズの展望:広がるプレイヤー層に応える挑戦
開発陣は、過去数作で『Civilization』のプレイヤー層が大きく拡大したと強調しています。4X(探検、拡大、開発、絶滅)やグランドストラテジーといったジャンルではニッチな層に特化することも可能ですが、35年以上の歴史を持つ『Civilization』は、幅広いプレイヤーを満足させるための努力を続ける必要があると考えています。
