AIで電力市場を再構築するTemが7,500万ドルの資金を調達
電力価格の高騰が続く中、AIデータセンターの増加が電力需要を押し上げています。そんな中、ロンドンを拠点とするスタートアップ「Tem」が、AIを活用して電力市場を根本から変革しようとしています。同社は最近、シリーズBラウンドで7,500万ドル(約110億円)の資金調達に成功しました。
Temは、AIを用いたエネルギー取引エンジンを開発し、他のエネルギー事業者と比較して価格を大幅に引き下げることを目指しています。すでに英国では2,600以上の法人顧客を獲得しており、彼らの電力料金を最大30%削減することに成功しています。
投資詳細と今後の展望
今回のシリーズBラウンドは、Lightspeed Venture Partnersが主導し、AlbionVC、Allianz、Atomico、Hitachi Ventures、Revent、Schroders Capital、Voyager Venturesが参加しました。この資金調達により、Temの企業評価額は3億ドル(約440億円)以上に達したと報じられています。
調達した資金は、オーストラリアと米国(テキサス州から開始)への事業拡大に充てられる予定です。共同創業者兼CEOのジョー・マクドナルド氏は、「私たちは、単に良い事業を営むだけでなく、将来的に株式公開を目指している」と述べ、同社の大きな野心を明らかにしています。
分散型エネルギー市場の構築
Temのビジネスモデルは、電力供給者と消費者をつなぐ「マーケットプレイス」として機能します。同社は当初から、再生可能エネルギー発電事業者と中小企業に焦点を当てることで、需要と供給の両面を確立してきました。マクドナルド氏は、「分散化され、より広範囲に供給されるほど、アルゴリズムにとって有利に働く」と語っています。
現在、Boohoo GroupやFever-Tree、そしてニューカッスル・ユナイテッドFCといった有名企業がTemの顧客リストに名を連ねています。
AIが牽引する二つの事業:RossoとRED
Temは現在、「Rosso」と「RED」という二つの主要な事業を展開しています。
- Rosso: 電力供給者と購入者をマッチングさせるための取引エンジンです。機械学習アルゴリズムとLLM(大規模言語モデル)を駆使して、電力の供給と需要を予測します。マクドナルド氏によると、Rossoの目標は、現在の電力市場に存在する複数の仲介業者を排除し、コストを削減することにあります。「AIを用いることで、人的コストや分断されたシステムを一つの取引インフラに置き換える機会が生まれる」と彼は述べ、顧客が支払う電力を卸売価格により近づけることを目指します。
- RED: Rossoの価値を実証するために構築された「ネオユーティリティ」です。Temは当初、Rossoを既存の電力会社に販売しようとしましたが、成果は得られませんでした。そこでREDを自社のユーティリティとして立ち上げ、Rossoの有効性を示すことに成功しました。現在、REDのみがRossoを利用していますが、将来的には他の電力会社にもRossoを開放する計画です。マクドナルド氏は、長期的には「誰が顧客を所有するか、誰が発電を所有するかは問題ではない。我々のインフラが利用されることが重要だ」と語り、AWSやStripeのように電力市場のインフラプロバイダーとなる野望を抱いています。
まとめ
Temは、AIの力を活用して、複雑で非効率な電力市場に透明性と効率性をもたらそうとしています。巨額の資金調達と明確な成長戦略を持つ同社の動向は、今後のエネルギー産業に大きな影響を与えることでしょう。
元記事: https://techcrunch.com/2026/02/09/tem-raises-75m-to-remake-electricity-markets-using-ai/
