FCCによる「The View」調査の背景
トランプ政権下の連邦通信委員会(FCC)が、ABCの番組「The View」に対する調査を開始したと報じられています。この動きに対し、FCCの民主党委員であるアンナ・ゴメスは、トランプ政権の批評家に対する威嚇行為であると強く非難しています。
報道によると、FCCは「The View」が、政治候補者への公平な放送時間を義務付ける「公平な時間規則(equal-time rule)」に違反しているかどうかを調査しています。FCC委員長のブレンダン・カーは以前から、深夜および昼のトーク番組が、この規則の免除対象となる「真正なニュース番組(bona fide news exemption)」の資格を失う可能性があると警告していました。今回の調査は、テキサス州上院議員候補ジェームズ・タラリコの「The View」への出演が引き金になったとされています。Fox Newsの情報源は、「フェイクニュースはもはや見逃されない」と述べ、ABCが共和党候補者にも同等の時間を提供するよう求められる可能性を示唆しました。トランプ大統領自身も、Fox Newsの記事を自身のソーシャルメディアに投稿し、この問題に注目を集めています。
トランプ政権とFCCのメディア戦略
今回の調査は、トランプ政権がメディアに対して行ってきた一連の圧力の一環と見られています。ホワイトハウスの報道官が「The View」の共同ホストを公に批判するなど、政権はこれまでも特定のメディアを標的にしてきました。
トランプはFCCに対し、ABCを含むネットワークの放送免許を取り消すよう頻繁に要求していますが、FCCは個々の放送局に免許を発行するものであり、全国ネットワークに直接発行するものではありません。しかし、FCCが独立機関であるにもかかわらず、カー委員長はFCCがホワイトハウスから独立していないと公言し、トランプの意向に従って行動している姿勢を明確にしています。これは、以前のFCC委員長がトランプの要求を拒否していたこととは対照的です。ゴメス委員は、放送局が憲法上の権利を恐れずに主張し続けるよう促しており、FCCの圧力にもかかわらず、第一修正条項が番組の表現の自由を保護すると強調しています。
「公平な時間規則」と「真正なニュース番組」免除の論点
「公平な時間規則」は、ある政治候補者に放送時間を提供した場合、対立候補にも同等の時間と機会を与えることを義務付けます。しかし、この規則には「真正なニュース番組」における候補者の出演に対する免除があります。これまで、エンターテイメントトーク番組もこの免除の対象とされてきました。
しかし、FCCメディア局の1月21日の通達は、2006年に「The Tonight Show with Jay Leno」を免除した決定にもかかわらず、現在のエンターテイメント番組がこの免除の資格を失う可能性があると警告しました。通達は、「現在放送されている深夜または昼間のテレビトーク番組のインタビュー部分が、真正なニュース免除の資格を得るという証拠はFCCに提出されていない」と述べています。
通信弁護士のハロルド・フェルドは、メディア局のこの通達には誤りがあると指摘しています。彼は、公平な時間規則がケーブルチャンネルにも適用されることを強調し、この規則が「公共の利益の義務」ではなく、議会議員が自らに与えた「条件付きアクセス権」であると主張しています。フェルドによると、この米国法は、公共スペクトルを使用する放送局だけでなく、ケーブルテレビにも適用されます。ただし、これは全国的なケーブルチャンネルではなく、ローカルで制作されたケーブル番組に限定されると説明しています。
過去の判例と現状の差異
フェルドは、メディア局の現在のガイダンスが、放送番組の免除資格を評価する上で確立された法となる過去の多くの判例を無視していると批判しています。FCCはジェイ・レノの判決を引用しましたが、フェルドはこれを「ニュースインタビュー」と「ニュース番組」の定義を拡大してきたFCCの長い一連の決定の一つに過ぎないと指摘しました。
- 1984年の画期的な決定:FCCは「The Phil Donahue Show」のような昼のインタビュー番組も、特定の基準を満たせば「真正なニュース番組」として認定されると判断しました。
- 定義の拡大:FCCはその後、「Good Morning America」や「Howard Stern」といった、エンターテイメントとニュースを融合した番組にもその適用範囲を急速に広げました。
過去の判例は、「番組にエンターテイメントの要素が含まれていても、候補者が『ニュース性』に基づいて選ばれ、番組が定期的にスケジュールされており、インタビューの質問と編集を制御していれば、自動的に免除が失われるわけではない」ことを示していました。しかし、フェルドは、現在のFCCの指導部の下では、たとえ伝統的なニュース番組であっても、番組が「特定の個人の立候補を促進する」ように設計されていると判断された場合、真正な免除が与えられない可能性があると警告しています。
調査の法的意義とメディアへの影響
もしFCCがABCや他のネットワークに対して罰則を科した場合、対象となるメディアは、FCCがその権限を逸脱したことを法廷で証明できる可能性があります。しかし、ジミー・キンメルの事例が示したように、FCCは公式な行動を取らなくとも、メディア企業に問題を引き起こすことが可能です。
フェルドは、「多くの場合、放送局が裁判で最終的に勝訴したとしても、選択的な執行が引き起こす苦痛ほど重要ではない」と述べており、この調査がメディア企業に与える実質的な圧力と自己検閲のリスクを強調しています。
