農業廃棄物から食用脂肪を生成するÄIO、食料安全保障と持続可能性に貢献

エストニアのスタートアップÄIO、農業廃棄物から食用脂肪を開発

エストニアのスタートアップÄIO(アイオ)が、農業廃棄物、例えばおがくずなどから食用脂肪を生成する画期的な手法を開発しました。この技術は、食品および化粧品業界における持続可能性と食料安全保障に大きく貢献する可能性を秘めています。

画期的な微生物技術

ÄIOは、バイオテクノロジー科学者であるNemailla Bonturi氏の博士研究に基づき、彼女とPetri-Jaan Lahtvee氏によって共同設立されました。彼らが開発したのは、新しい酵母株です。この酵母は、パンやビールのように砂糖を消費して二酸化炭素やアルコールを生成する代わりに、農業廃棄物から得られる糖分を消費して脂肪分子を生成します。

研究チームは、エストニアの豊富な農業資源(トウモロコシ、穀物、サトウキビ、木材など)から生じる廃棄物由来の糖分をこの微生物が効率的に利用できることを確認しました。生成される脂肪は「既存の脂肪と非常に似た脂肪プロファイル」を持ち、固形脂肪としては鶏肉の脂肪に、液体油としてはキャノーラ油の代替となる可能性を秘めています。

持続可能性と食料サプライチェーンの強化

この技術の最も重要な利点の一つは、パーム油への依存度を低減できる点です。パーム油の生産は、熱帯雨林の破壊や生態系の喪失といった環境問題を引き起こしてきました。ÄIOの技術は、これらの環境負荷を軽減し、より持続可能な脂肪源を提供します。また、農業廃棄物を利用することで、食料生産における資源の有効活用を促進し、食料サプライチェーンのレジリエンス(回復力)を高めることにも繋がります。Bonturi氏によると、同社の最終製品は「農薬を含まない点で、植物油よりもさらに純粋」であると強調されています。

商業化への道と今後の課題

ÄIOは2022年に商業的実現可能性を確信し、これまでに約700万ドルを調達しています。同社は2027年までに商業規模での脂肪生産施設を建設し、技術ライセンス供与も計画しています。しかし、食用脂肪として販売するためには、各国での許認可取得が不可欠です。特に、代替食品の承認に積極的なシンガポールから開始する可能性が高いとされています。

Bonturi氏は、「もちろん、これは新しいタイプの食品生産方法であり、すべての許可と分析を経る必要があります」と述べており、規制当局との連携が今後の重要な課題となります。

TechCrunch Disruptでの発表

ÄIOは、今月後半にサンフランシスコで開催されるTechCrunch DisruptのStartup Battlefieldでその技術を披露する予定です。このイベントは、同社の革新的なソリューションを世界に発信する絶好の機会となるでしょう。


元記事: https://techcrunch.com/2025/10/07/startup-battlefield-company-aio-invented-a-method-to-make-edible-fat-from-ag-waste-like-sawdust/