現代アメリカ政治の変貌:クソ投稿とオーラ稼ぎが支配する言論空間

現代アメリカ政治の奇妙な言論空間

ジャーナリストであり弁護士でもあるサラ・ジョン氏が、ドナルド・トランプ氏の二期目の大統領職を想定したアメリカ政治の言論空間について、「クソ投稿(shitposting)」「オーラ稼ぎ(aura farming)」という概念を用いて分析しています。彼女の理論によれば、現代のアメリカ政治は、かつての規範的な対話から逸脱し、混沌とした非論理的な形態へと変貌を遂げているとのことです。

「風船カエル」が象徴するもの

この新たな政治言論の象徴として、ジョン氏はポートランドのICE施設に現れた「風船カエル」の事例を挙げます。トランプ政権が国家警備隊を派遣した際、連邦法執行機関の前に現れたこのカエルは、滑稽な動きで彼らを退かせました。この動画はTikTokで100万回以上再生され、トランプ政権への抵抗の象徴として拡散されました。

風船カエルは、それ自体に特定の意味や風刺の意図はありません。しかし、軍事化されたICEの抑圧的な状況と対比されることで、その「意味のなさ」が強力なメッセージとなり、現代の政治言論のあり方を象徴しているとジョン氏は指摘します。

「オーラ稼ぎ」と「クソ投稿」の定義

ジョン氏によると、現代政治の言動は主に二つのインターネットに毒された行動様式に分かれます。

  • オーラ稼ぎ(Aura Farming)「クールに見せようとする真剣な試み」を指します。副大統領JD・ヴァンスがチャーリー・カークへの復讐を宣言したことや、トランプ氏がイリノイ州知事を投獄すると脅したこと、それに対する知事の「かかってこい」という返答などが例として挙げられます。これらは、自身の権威や影響力を誇示しようとする姿勢です。
  • クソ投稿(Shitposting)「ユーモアの形をとった支離滅裂さ、意味や言葉、現実との関わりを拒否する一種のニヒリズム」です。真剣さを嘲笑するものであり、ホワイトハウスが公開したASMR形式の強制送還動画などがこれに当たります。これらは行動を促すものではなく、説得の意図もなく、ただ意味のない残酷さを示すものです。

政治言論の新たな力学:三すくみ構造

ジョン氏は、この政治言論の力学を「じゃんけん」のような三すくみ構造で説明します。オーラ稼ぎ、クソ投稿、そして「通常行動」の三つが互いに影響し合います。

  • オーラ稼ぎは、他のオーラ稼ぎと戦い、より強いオーラを持つ者が勝利します。しかし、クソ投稿者に対しては非常に脆弱です。
  • クソ投稿は、オーラ稼ぎには勝利しますが、通常行動をとる人々にはほとんど影響を与えません。
  • 通常行動は、オーラ稼ぎには敗北し、クソ投稿には勝利します。

この構造において、軍事化された抑圧に直面した際、通常行動は敗北し、オーラ稼ぎはクソ投稿に敗北するという皮肉な結果が生まれます。つまり、「ボディアーマーを着た男は、常に膨らませたカエルスーツを着た男に負ける」のです。

政治の「投稿化」がもたらすもの

風船カエルはアメリカ政治にとって最良の出来事かもしれませんが、政治が単なる「投稿」へと堕落している現状は、最終的には悪いことだとジョン氏は結論付けます。この「三すくみ投稿政治」では、誰が勝つか負けるかが、物質的な状況や正義、公共の利益から切り離されてしまいます。

特に、トランプ氏の二期目の政権がインターネットの「毒」に深く依存しているため、次に何が起こるかを予測することは困難です。トランプ政権が通常通りに行動できない限り、彼らがオーラ稼ぎを続ける限り、クソ投稿者たちが勝利し続けるだろうとジョン氏は警鐘を鳴らしています。


元記事: https://www.theverge.com/policy/798491/frog-portland-trump-national-guard