Google、インドに150億ドル投資しAIインフラハブを設立:データ主権とセキュリティへの影響

Google、インドに大規模AIインフラ投資

Googleは、インドに150億ドル(約2兆2500億円)を投じ、1ギガワットのデータセンターとAIハブを設立すると発表しました。この大規模な投資は、今後5年間、2030年までに実施される予定で、インド南部アーンドラプラデーシュ州の港湾都市ヴィシャカパトナムに建設されます。

今回の投資は、Googleにとってインドにおける過去最大の投資となり、2020年に発表された100億ドルのコミットメントに続くものです。Google CloudのCEOであるトーマス・クリアン氏は、このAIハブがGoogleにとって米国以外で最大の投資であり、将来的には「複数ギガワット」規模に拡大される見込みだと述べています。

戦略的拠点としてのヴィシャカパトナム

ヴィシャカパトナムに設立されるAIハブは、Googleの12カ国にまたがるグローバルAIセンターネットワークの一部となります。Googleはまた、ヴィシャカパトナムをグローバル接続ハブと位置づけ、海底ケーブルインフラを導入する計画も発表しました。これにより、インド国内の様々な地域を結ぶデジタルバックボーンとしての役割も期待されています。

このプロジェクトの実現に向けて、Googleはインドの通信事業者Bharti Airtelと提携し、データセンターとケーブル陸揚げ局を建設します。さらに、Adani Group傘下のAdaniConneXとも協力し、データセンターのインフラ整備を進めます。

AIハブの機能と提供サービス

このAIハブは、「フルスタックのソリューション」を提供するとされており、Google独自のTensor Processing Units(TPUs)を導入し、ローカルでのAI処理を可能にします。また、GoogleのAIモデル(Geminiを含む)や、エージェントおよびアプリケーション構築のためのプラットフォームへのアクセスも提供されます。

さらに、Google検索、YouTube、Gmail、Google広告といった主要な消費者サービスもこのハブによってサポートされます。クリアン氏は、「このハブはインドだけでなく、インドからアジア、そして世界の他の地域にもサービスを提供する」と述べ、その戦略的な重要性を強調しました。

地政学的背景とセキュリティ上の考慮事項

今回のGoogleの巨額投資は、インド政府が米国テクノロジー大手への依存度を減らし、「スワデーシー(国産品)」製品の利用を推進している中で行われます。この動きは、データ主権と国家安全保障の観点から、外国企業による大規模なデータインフラ構築がインドのデジタルエコシステムに与える影響について、重要な議論を提起します。

インドのIT大臣であるアシュウィニ・ヴァイシュナウ氏は、このAIハブがインドのAIミッション目標に大きく貢献すると歓迎しつつ、Googleに対し、グローバルインターネットデータ転送の次なる主要ハブとしてアンダマン諸島を検討するよう促しました。また、ヴィシャカパトナムとミャンマーのシットウェを結び、インド北東部の接続性を向上させる提案も行われました。

このような大規模なデータセンターとAIハブの設立は、膨大な量の機密データを処理・保存することから、サイバーセキュリティ対策の強化が不可欠となります。また、海底ケーブルやデータセンターといった重要インフラは、国家レベルのサイバー攻撃やスパイ活動の標的となる可能性も秘めており、その物理的および論理的なセキュリティ確保が極めて重要となります。インド政府の国産技術推進と、Googleのグローバル戦略が交錯する中で、データ主権とセキュリティのバランスをどのように取るかが今後の焦点となるでしょう。


元記事: https://techcrunch.com/2025/10/14/google-to-invest-15b-in-indian-ai-infrastructure-hub/