Starship V2、最終飛行で主要目標を達成
SpaceXは、Starshipの現行構成であるV2の最終試験飛行を成功裏に完了し、プログラムが次のフェーズへ移行したことを発表しました。このミッションは、同社が設定した全ての主要目標を達成したとされています。日本時間2025年10月14日夜、テキサス州スターベースから約120メートルに及ぶ巨大ロケットが打ち上げられました。
最終飛行の詳細と実験成果
今回の飛行では、スーパーヘビーブースターが再利用され、新たな着陸燃焼プロファイルが試されました。具体的には、13基のエンジンを再点火した後、5基、そして最終的には3基に絞り込み、メキシコ湾への軟着水を約7分後に成功させました。これは、ブースターの回収と再利用の信頼性を高める上で重要な進歩です。
一方、Starshipの上段は、8基の模擬Starlink衛星シミュレーターを展開し、将来のスターベースへの帰還着陸に用いられる「ダイナミックバンキングマニューバ」を試験しました。上段はその後、インド洋に着水しました。この飛行は、第2世代Starshipと第1世代スーパーヘビーの最終打ち上げとなりました。
- ヒートシールドタイル:技術者たちは、上段のヒートシールドタイルについて、選択的な除去や新型タイルのバリエーションを含む実験を行い、再突入時のデータを収集しました。
- 主要マイルストーンの再現:前回の飛行と同様に、衛星シミュレーターの展開や、Starshipの6基のラプターエンジンのうち1基を軌道上で再点火するといった主要なマイルストーンも再現されました。
次世代機Starship V3への移行と展望
今回の試験飛行の成功は、プログラムの次のフェーズ、すなわちアップグレードされたプロトタイプ「V3」の飛行を正式に開始するものです。V3は、軌道上でのドッキングや推進剤輸送のデモンストレーションに対応できるよう設計されており、これらは月や火星を目指す宇宙船にとって不可欠な能力となります。
SpaceXによると、V3には構造的な変更とラプターエンジンのアップグレードが施され、吊り上げ能力の向上が図られています。具体的な数値は公表されていませんが、同社は「この次世代機は、最初のStarship軌道飛行、運用ペイロードミッション、推進剤輸送などに使用され、地球軌道、月、火星、そしてその先へのサービスを提供する、完全に迅速に再利用可能な機体へと進化していく」と述べています。
インフラ整備と戦略的意義
並行して、SpaceXはスターベースのパッドAをアップグレードし、打ち上げをパッドBに移行しています。また、フロリダ州ケープカナベラルとケネディ宇宙センターでは、デュアルStarship発射台の建設が進められています。
Starshipは、これまでに開発された中で最も強力なロケットであり、NASAのアルテミス計画とSpaceXの高性能Starlink衛星配備計画の両方にとっての要です。NASAのショーン・ダフィー長官代理は、このミッションを「アメリカ人を月の南極に着陸させるためのもう一つの大きな一歩」と称賛しました。
SpaceXは、2027年に予定されているアルテミス3有人ミッション向けに、人間が搭乗可能なStarshipの派生型である「Human Landing System (HLS)」の開発に40億ドル以上を授与されています。しかし、この期限に間に合わせるためには、軌道上ドッキングや軌道上推進剤輸送といった、ますます複雑なマイルストーンを実証する必要があります。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/14/spacex-wraps-action-packed-starship-v2-era-as-program-moves-to-v3/