イントロダクション
宇宙輸送スタートアップのImpulse Spaceは、2028年までに年間最大6トンの貨物を月へ輸送するという野心的な計画を明らかにしました。同社は、中規模の月面輸送市場における現在のギャップを埋めることを目指しています。
月面輸送の新たな市場ギャップを埋める
Impulse Spaceは、NASAの商業月面ペイロードサービス(CLPS)プログラムの小型着陸機では大きすぎるが、SpaceXやBlue Originが開発中の有人月着陸機には小さすぎる、0.5トンから13トンの中間サイズの貨物輸送に「決定的なギャップ」があると指摘しています。この能力は、月面での活動を大きく加速させる可能性を秘めています。
輸送される可能性のあるペイロードには、以下のようなものが挙げられます。
- ローバー(月面探査車)
- 居住モジュール
- 発電機
- 通信システム
- 月面探査車両
独自の技術と輸送アーキテクチャ
この計画の中核をなすのは、Impulse Spaceが開発中の新しい月着陸機と、高エネルギーキックステージ「Helios」です。このシステムは、軌道上での燃料補給なしに、数トンもの貨物を月面へ運ぶことを可能にします。
提案されているアーキテクチャでは、着陸機とキックステージは標準的なロケットで打ち上げられ、まず地球低軌道(LEO)に展開されます。その後、Heliosが7日以内に着陸機を月周回軌道(LLO)まで運び、そこで両機は分離。着陸機が月面へと降下します。
Impulse Spaceは、宇宙船エンジンの開発において深い専門知識を有しており、月着陸機用エンジンは、同社の小型宇宙船Miraで使用されているSaiphスラスタと同じ燃料を組み合わせたものです。Heliosの開発も「順調に進んでおり」、2026年後半には初の飛行が予定されており、2028年までには年間複数回の飛行を目指しています。
実行における課題と潜在的影響
しかし、この野心的な計画には実行上のリスクも伴います。同社が指摘するように、月着陸機用エンジンは、宇宙の真空中で超精密な制御を行うために、スロットル可能であること、再始動可能であること、そして高い比推力を持つことが求められます。
Impulse Spaceはプレスリリースで「業界の需要と関心に応じて実行する準備ができている」と述べ、慎重な姿勢も見せています。しかし、もし同社がこの計画を実現できれば、それは月への全く新しい輸送スケジュールを開拓し、将来の月面活動に計り知れない影響を与えることになるでしょう。