元CEOオースティン・ラッセル氏、Luminar買収を提案
倫理調査によりCEOを解任されてから5ヶ月後、LidarメーカーであるLuminarの創設者で億万長者のオースティン・ラッセル氏が、同社の買収を提案しました。この買収提案は、ラッセル氏が新たに設立した企業「Russell AI Labs」を通じて、LuminarのクラスA普通株式の100%を取得するというものです。買収価格は現時点では非公開となっています。
SECへの提出書類によると、買収が実現した場合、Luminarは引き続き公開企業として存続し、Russell AI Labsは「別の、より大規模なグローバル自動車技術企業を買収」し、Luminarと合併させて「統一された技術プラットフォーム事業(『Luminar 2.0』)」を創設する可能性があります。ラッセル氏は、この統合された新会社にも投資する意向を示しています。
この提案は10月14日に行われ、Luminarの「特定の株主の提案」および「取締役会の特定のメンバーの招き」によるものとされています。交渉に詳しい情報筋によると、一部の取締役会メンバーは9月にラッセル氏にこのアイデアを持ちかけていたとのことです。
倫理調査とCEO交代の背景
ラッセル氏のCEO交代は、今回の買収提案と同様に突然で驚くべきものでした。Luminarは5月19日、第1四半期決算発表と同じ日にラッセル氏の辞任を発表しました。後任には元Xerox幹部のポール・リッチ氏が就任しました。
同社は、ラッセル氏が解任された理由について、「取締役会の監査委員会が『事業行動規範および倫理に関する調査』を実施した」と述べるに留まり、調査結果の詳細は一切説明していません。この不透明な対応と情報開示の方法を巡り、Luminarは株主から複数回訴訟を起こされています。
過去の買収試練と新たな動き
ラッセル氏にとって、買収の試みは今回が初めてではありません。2023年にはForbesの買収を試みましたが、一部の投資家が約束を履行しなかったことや、ロシアのオリガルヒとの関連が指摘されたことなどにより、最終的に失敗に終わっています。
ラッセル氏はCEOを退任した後もLuminarの取締役会に留まっていましたが、後任CEOへの移行や技術事項に関して「利用可能である」とされていたにもかかわらず、交代以来、SECへの提出書類に取締役として署名していません。
その間、ラッセル氏は9月に、メルセデス・ベンツ・グループAGのCTO兼取締役であるマルクス・シェーファー氏と、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの元パートナーであるムルタザ・アーメド氏と共にRussell AI Labsを共同設立しました。この新会社は「変革的なAIおよびフロンティア技術企業を支援し、構築する」と謳っており、すでにエージェントAI企業Emergenceに3億ドルを投資しています。
企業統治と透明性への影響
今回の買収提案は、Luminarの企業統治と透明性に関する懸念を再燃させる可能性があります。元CEOの解任理由が不明瞭なまま、その人物が会社を買い戻そうとしている状況は、株主や市場からの信頼に影響を与えかねません。特に、過去の買収試みにおける「ロシアのオリガルヒとの関連」という疑惑は、今回の提案においても潜在的なリスク要因として注目されるでしょう。
Luminarの取締役会が、倫理調査の対象となった元CEOからの買収提案にどのように対応するのか、そしてそのプロセスがどれほど透明性を持って進められるのかが、今後の焦点となります。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/17/ousted-luminar-ceo-austin-russell-wants-to-buy-the-company/