導入
WordPressの共同創設者でありAutomatticのCEOであるマット・マレンウェッグ氏は、同社によるTumblrの買収をこれまでの最大の失敗と表現しました。この発言は、2025年10月20日に開催されたWordCamp Canada 2025でのタウンホールセッションで行われ、Tumblrの技術的な課題と収益性に関する懸念が浮き彫りになりました。
Tumblrの現状と課題
マレンウェッグ氏によると、TumblrはWordPressとは異なる技術スタックで運用されており、バックエンドをWordPressインフラに移行する計画がありました。しかし、5億を超えるブログの移行にかかる莫大なコストと、Tumblrが現在も収益を上げていないことから、この大規模な取り組みは今年初めに保留されました。
同氏は、Tumblrの運営コストが収益を大幅に上回っている現状を認め、「おそらく現時点での私の最大の失敗、あるいは機会損失ですが、私たちはまだ取り組んでいます」と述べました。この収益性の欠如は、プラットフォームの持続可能性とユーザーデータの長期的な保全性に対する懸念を引き起こしています。
将来の展望とその他のプロジェクト
もしTumblrがWordPressのバックエンドに移行すれば、メンテナンスがよりシンプルかつ費用対効果が高くなり、さらにオープンなソーシャルウェブであるFediverseへの参加も可能になるでしょう。
マレンウェッグ氏は、Tumblr以外のAutomatticのプロジェクトについても言及しました。これには、WordPress、Jetpack、WooCommerceが含まれます。特に、ウェブブラウザでWordPressを完全に実行できるPlaygroundや、KakaoTalkや出会い系アプリのメッセージングサービスへのブリッジサポートを拡大するユニバーサルメッセージングアプリBeeperの進捗を強調しました。
AIとオープンソースコミュニティへの言及
AIについては、「私たちはボトルに閉じ込められた魔神を元に戻すことはできない」と述べ、OpenAIのような企業を「大きすぎて潰せない」と評しました。WordPressのテーマディレクトリでは、AI生成画像を拒否するのではなく、適切に検索をフィルタリングできるようAI生成画像にタグ付けすることを検討していると明かしました。これは、コンテンツの透明性と信頼性維持への一歩と見なせます。
また、WordPressホスティング企業であるWP Engineとの法的な論争についても触れました。マレンウェッグ氏は、「悪意のある行為」はあっても「悪意のある行為者」はいないと述べ、コミュニティに対し、適切な行動をとらないビジネスを支持しないよう「財布で投票する」ことを奨励しました。同氏は、WordPressEngineTracker.comというサイトが裁判所命令で一時的に閉鎖されたことについて、「言論の自由と透明性を抑圧しようとしている」と強く批判しました。これは、オープンソースコミュニティにおけるガバナンスと透明性の重要性を浮き彫りにする出来事です。
結論
マレンウェッグ氏のコメントは、Automatticが直面する課題と、オープンソースエコシステム全体の健全性に対する彼の深いコミットメントを示しています。Tumblrの再建と、技術革新、コミュニティの倫理的行動の推進という二つの側面で、同社の今後の動向が注目されます。
元記事: https://techcrunch.com/2025/10/20/automattic-ceo-calls-tumblr-his-biggest-failure-so-far/