アフリカe-モビリティ市場の現状とSpiroの台頭
アフリカの電動モビリティ市場は、これまでその大きな可能性にもかかわらず、インフラの不足や電力網の不安定さといった課題に直面してきました。しかし、ドバイに本社を置くSpiro社は、この状況を大きく変えようとしています。同社は、アフリカ輸出開発基金(FEDA)が主導する形で、1億ドルの資金調達を発表しました。これは、アフリカのEVモビリティ分野における過去最大の投資となり、Spiroを大陸で最も積極的な電動バイク企業としての地位を確固たるものにしています。
Spiroは、2025年末までにアフリカ全土で10万台以上の電動バイクを展開する計画であり、これは前年比で400%もの急増を意味します。同社は、わずか2年前には8,000台の電動バイクと150箇所の交換ステーションをベナンとトーゴで運営していましたが、現在ではルワンダ、ケニア、ナイジェリア、ウガンダを含む6カ国で6万台以上のバイクと1,500箇所の交換ステーションを展開しています。バッテリー交換回数は、2022年の400万回から今年は2,700万回以上に急増しており、その成長は目覚ましいものがあります。
Spiroの革新的なビジネスモデル
Spiroの急成長の秘訣は、アフリカの現実に対応したビジネスモデルにあります。アフリカの都市では、バイクタクシー(ケニアでは「ボダボダ」、ナイジェリアでは「オカダ」)が人々の移動と物流を支えていますが、そのドライバーたちは高騰する燃料費に苦しんでいます。SpiroのCEOであるカウシク・バーマン氏は、「ドライバーは毎日10〜12時間働き、150〜200キロを走行しますが、燃料費が高いためほとんど貯蓄ができません。だからこそ、バッテリー交換モデルを通じた電動モビリティがこのセグメントに完璧に適合するのです」と述べています。
Spiroの電動バイクは、ガソリンモデルと比較して初期費用が約40%安く、1キロメートルあたりのコストも約30%削減できます。これにより、ドライバーは1日あたり最大3ドルを節約できるとバーマン氏は主張しています。Spiroは、バイクの販売とバッテリー交換ネットワークの両方から収益を得ています。ライダーはSpiroのバイクを購入またはリースし、交換ステーションで充電済みのバッテリーを受け取り、消費したエネルギーに対してのみ料金を支払います。各交換ステーションには数十個のバッテリーが常時充電されており、ダウンタイムをゼロに抑えることで、ドライバーの運用継続性を確保しています。
さらに、Spiroは再生可能エネルギーとエネルギー貯蔵を活用し、停電時でもネットワークが稼働し続けるようにしています。交換ステーションはガソリンスタンド、ショッピングセンター、さらには宗教施設に設置され、地域社会との連携を通じて新たな雇用も創出しています。同社は、ケニア、ナイジェリア、ルワンダ、ウガンダに4つの組立・製造施設を設立し、バイクや主要部品(トラクションモーター、コントローラー、バッテリー)の現地生産を進めています。現在30%の現地調達率を2年以内に70%に引き上げる計画であり、サプライチェーンの安定性と地域経済への貢献を強化しています。
成長戦略と今後の展望
今回の1億ドルの資金調達(FEDAから7,500万ドル、残りは他の戦略的投資家から)は、Spiroのさらなる拡大を後押しします。この資金は、バッテリー交換ネットワークの拡大、製造能力の強化、研究開発、そしてカメルーンやタンザニアといった新規市場でのパイロットプログラムの立ち上げに充てられます。Spiroは、Ampersand、ROAM、Max、BasiGoといった他のEVスタートアップとの競争に直面する可能性がありますが、バーマンCEOは、「我々の真の競争相手はガソリンバイク市場であり、まだバイクを所有していない、あるいは手頃な交通手段や雇用機会にアクセスできない何百万人もの潜在的なライダーたちです」と強調しています。
アフリカには約2,500万台のバイクがありますが、人口規模が近いインドには3億2,000万台のバイクが存在します。この13倍のギャップは、アフリカ市場における電動モビリティの巨大な潜在的機会を示しており、Spiroはこの未開拓の市場でリーダーシップを確立しようとしています。