新たな企業スパイ疑惑が浮上:401(k)管理スタートアップ2社が対立

新たな企業スパイ疑惑が浮上

従業員のオンボーディングプラットフォームと401(k)管理という一見地味な業界で、またしても企業スパイに関する衝撃的な疑惑が浮上しました。今年に入り、HRソフトウェア大手RipplingとDeelの間で、スパイの潜入や組織的なデータ窃盗を巡る訴訟が繰り広げられていますが、今度は401(k)管理のユニコーン企業であるHuman InterestとGuidelineが連邦裁判所で激しく対立しています。

Axiosが最初に報じたこの訴訟は、Human InterestがGuidelineを相手取りユタ州連邦裁判所に提出したもので、その内容は驚くべきものです。

「ステリ乗っ取り」計画の全貌

訴状によると、Guidelineに対するHuman Interestの訴訟には、「HIをバラバラにするのは最も簡単なことだ」というBrandon Sterriが兄弟に送ったテキストメッセージが引用されています。このメッセージが送られた1月29日、Brandonと彼の兄弟BrianはまだHuman Interestから給与を受け取り、会社支給のノートパソコンにログインしていました。彼らは機密データの保護に同意していたにもかかわらず、その行動は裏切りに満ちていました。

彼らの三男であるEirikは競合他社であるGuidelineで働いていました。訴状によれば、ステリ兄弟は単なる大言壮語に終わらず、「ステリ乗っ取り」と称する作戦を実行したとされています。これは、企業スパイ活動が非常に静かに行われるべきであるという原則を著しく誤解しているか、あるいは並外れた傲慢さを示しています。

機密情報流出の手口と重要性

訴状は、BrianとBrandonがHuman Interestのジュニアインサイドセールス担当者として勤務中に、パートナーシップリード、顧客データ、内部戦略文書など、最も機密性の高い情報を組織的にGuidelineに流出させたと主張しています。しかも、その情報はGuidelineの最高経営責任者(CEO)Kevin Busqueと最高財務責任者(CFO)Steven Wuに直接共有されていたとされています。

BrianがHuman Interestを辞任した2日後、彼は元同僚のCastroに「今月のISRチームの総リードフローのスクリーンショット」という「大きな頼み」をしました。この「総リードフロー」は、潜在顧客の基本的なプールであり、成長軌道と市場浸透を決定する極めて重要な情報です。Human Interestは、この情報の育成に長年、数百万ドルを費やしてきました。訴状は、この情報が「誤った手に渡れば、重大な情報格差を生み出し、かなりの戦略的優位性をもたらす」と指摘しています。

訴状は、ステリ兄弟が辞任前に「リードデータ」などの文書をダウンロードし、会社のメールアカウントから個人のGmailアドレスにファイルを送信していたと述べています。彼らは会社のノートパソコンで個人のメールにログインすることで、Human Interestの検出システムを回避したとされています。

内部協力者への働きかけと拒否

CastroはBrianの要求の重大性を理解し、「汚い手を使うのは構わないが、仕事を見つけてくれ」と返答しました。Brianはデータと引き換えにGuidelineでの雇用を約束したとされています。しかし、Castroがすぐにデータを提供しなかったため、Brianは翌朝も「まだ頼みがある」と催促しました。Castroは「Brian、それはできないわ」と拒否しました。

Brianはその後もCastroに連絡を取り続け、最終的には妻のMcKennaが彼に代わって連絡を取りました。訴状によると、Brianは他のHuman Interest従業員との会話で、GuidelineがHuman Interestの総リードフローを知りたがっていると目的を明かしたとされています。

Brianは、Castroに拒否されたのと同じ2月27日に、別のHuman Interest従業員であるChloe Garzaにも内部指標を要求しましたが、彼女も「HI関連のものは何も送れない」と拒否しました。訴状は、Brianが「Mitch(別のHI営業担当者)だけがGDL(Guideline)が望む情報を提供できるだろう」と述べたことが、彼の意図を明確に示していると主張しています。

経営層の関与と恐喝疑惑

Human Interestは、この事件が単なる暴走した従業員によるものではなく、経営層の承認を得た組織的な作戦であったと主張しています。Human Interestが3月初旬に停止命令書を送付した後、Eirik Sterriは兄弟に、Guidelineの営業担当上級副社長Andrew Conleyと話した結果、「Andrewは素晴らしい。皆が本当に君たちを支持している。皆がこの状況にどれほど興奮しているかを表明している。これは乗り越えられるだろう」とテキストメッセージを送ったとされています。

さらに、Human Interestは恐喝があったと主張しています。Guidelineは93億ドルの給与計算大手Gustoに6億ドルで買収されることに合意していました。この取引の一環として、Guidelineは競合する給与計算会社に関連する特定の資産とアカウントを売却する予定でした。Human Interestがこれらの資産の一部購入について問い合わせた際、GuidelineのCFOは「訴訟を取り下げなければ取引は中止だ」と最後通牒を突きつけたとのことです。

激化するHRソフトウェア業界の競争

HRソフトウェア業界が企業戦争の舞台と化していることは、スタートアップエコシステムで大きな話題となっています。RipplingとDeelがスパイの潜入やRICO法違反などの疑惑を巡って争っているように、この種の事件は深刻なビジネス上の影響を及ぼします。Human Interest、ステリ兄弟、そしてGuidelineとその経営陣にとって、その利害は非常に高いものとなっています。

Human InterestはSoftBank、Baillie Gifford、TPGなどの投資家から7億ドル以上を調達し、評価額は14億ドルに達しています。一方、Guidelineは2021年にGeneral AtlanticとFelicisの支援を受けて3億4000万ドルを調達し、評価額は12億ドルに達しています。


元記事: https://techcrunch.com/2025/10/27/new-corporate-espionage-claims-emerge-centered-on-two-highly-valued-401k-admin-startups/