未公開物件市場の新たな挑戦者:Unlisted Homes
TechCrunch Disrupt 2025で注目を集めるスタートアップ「Unlisted Homes」は、不動産市場に新たな風を吹き込んでいます。このプラットフォームは、住宅がまだ市場に出る前の段階で、潜在的な買い手と売り手を繋ぐという革新的なアプローチを提供します。
創業者であるケイティ・ヒル氏の個人的な経験が、このアイデアの源泉となりました。彼女が隣人の家に関心を持った際、市場に出る前にその意向を伝えることで、将来的な取引の可能性が生まれたことから、同様のニーズが広く存在すると確信したのです。
Unlisted Homesの仕組みとデータ活用
Unlisted Homesは、Zillowのような形式で、まだ市場に出ていない物件の「プロフィール」を作成します。このプロフィールは、2,100万件に及ぶ公的記録を基に構築されており、一般的な不動産情報サイトと同様の詳細情報を提供します。
買い手は、興味のある物件に対して「待機リスト」に登録することができます。これにより、物件への明確な関心を示すことが可能になります。待機リストが作成されると、売り手である住宅所有者にはその旨が通知され、自身の物件情報を更新したり、待機リストに登録した買い手とチャットしたりすることができます。TechCrunch Disruptのステージでは、これまでウェブプラットフォームのみだったサービスに、新たにiOSアプリがローンチされることも発表されました。
このサービスは、公的記録の利用や個人間のコミュニケーションを促進するため、データプライバシーや個人情報の保護が重要な側面となります。住宅情報や個人の関心データがどのように管理・利用されるか、セキュリティの観点からも今後の動向が注目されます。
独自のビジネスモデルと成長戦略
Unlisted Homesは、プラットフォーム上で直接不動産取引を完結させるのではなく、既存の不動産取引リソースを活用する方針です。その代わりに、特定の郵便番号地域における不動産エージェントに対し、スポンサーシップを販売することで収益を得ています。これにより、エージェントは地域の専門家として、各物件情報にリンクされることになります。
将来的には、屋根業者や電気技師など、住宅所有者が必要とする地域のリソースとの連携も視野に入れています。既に、5,700件の物件が待機リストに登録され、約40億ドル相当の潜在的な不動産取引額を創出していると報告されており、その成長は著しいものがあります。
著名なメンターと資金調達の成功
Unlisted Homesの事業立ち上げには、Kayak共同創業者であるポール・イングリッシュ氏からのメンターシップが大きく貢献しました。イングリッシュ氏の紹介により、Kayak元チーフアーキテクトのビル・オドネル氏がエンジェル投資家兼ボードメンバーとして参画しています。
2022年に創業されたUnlisted Homesは、エンジェル投資家から約100万ドルを調達し、その後、昨年11月にはHearst Lab主導でさらに225万ドルを調達するなど、順調に資金調達を進めています。
まとめ
Unlisted Homesは、不動産市場における情報非対称性を解消し、住宅売買の新たな機会を創出する可能性を秘めています。その革新的なアプローチと急速な成長は、TechCrunch Disrupt 2025でも大きな注目を集めました。
しかし、公的記録やユーザーの関心データを取り扱うサービスであるため、その成長と共に、住宅情報や個人データの適切な管理、そしてセキュリティ対策の徹底が、ユーザーからの信頼を維持し、持続的な成功を収める上で極めて重要となるでしょう。
