AIブームが大型買収を左右
AI（人工知能）市場の過熱が、企業の買収戦略に大きな影響を与えています。米国時間10月31日、AIデータセンタープロバイダーのCoreWeaveによる、同業のCore Scientificに対する90億ドル規模の買収提案が、Core Scientificの株主によって否決されました。これは、AIインフラへの投資が加速する中で、Core Scientificが単独でさらなる成長を遂げられるという見方が強まったためです。
Core Scientificの筆頭株主であるTwo Seas CapitalのSina Toussi氏は、買収提案に反対票を投じるよう推奨。同氏は、提案された1株あたり16.40ドルの価値は、AIインフラ企業の評価額が急騰している現状に見合わないと主張しました。この否決を受け、Core Scientificの株価は上昇し、時価総額は66億ドルに達しています。
CoreWeaveの戦略転換と成長
CoreWeaveは元々、Core Scientificと同様に暗号資産マイニングから事業を開始しましたが、現在はNvidiaとの提携を通じてAIワークロードの提供に注力しています。同社の株価はIPO以来急騰し、時価総額は140億ドルから660億ドルへと大幅に成長。この成長を背景に、CoreWeaveは積極的な買収戦略を進めていました。
CoreWeaveは既にCore Scientificと12年間で100億ドル規模の施設利用契約を結んでおり、今回の買収提案もその関係をさらに深めるものでした。しかし、株主の判断により、この大型統合は実現しませんでした。
Pythonノートブック「Marimo」の獲得
Core Scientificの買収が頓挫したCoreWeaveですが、同日中に新たな動きを見せました。同社は、オープンソースのJupyter Notebook競合であるPythonノートブック「Marimo」を買収したことを発表しました。買収額は非公開ですが、Marimoはこれまで約500万ドルを調達していたと推定されています。
Pythonノートブックは、コード、リッチメディア、説明テキストを単一の共有可能なファイルに統合する開発ツールであり、インタラクティブなデータ分析やAIアプリケーション開発に広く利用されています。この買収は、CoreWeaveが単なるホスティングサービスから、AIアプリケーション構築へと事業の「スタック」を上位に移行させる戦略の一環と見られています。
AI市場の過熱と今後の展望
投資家がより大きなリターンを求めて買収提案を拒否する動きは、現在のAI市場が「AIバブル」の様相を呈している可能性を示唆しています。CoreWeaveは引き続き買収対象を探しているとされており、AI分野における企業の再編や新たな技術獲得競争は今後も続くでしょう。Marimoの買収は、CoreWeaveがAI開発エコシステムにおける影響力を強化し、より付加価値の高いサービス提供を目指す姿勢を明確にしています。