はじめに:運転免許データ共有の警告
民主党の議員グループが、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、ウィスコンシンを含む複数の州知事に対し、州が意図せず運転免許データを連邦移民当局(ICE)と共有していることについて警告を発しました。この問題は、州警察機関が管理する非営利団体であるNational Law Enforcement Telecommunications System(Nlets)を通じて、住民の個人データが「摩擦のない、セルフサービスアクセス」の形でICEや他の連邦機関に提供されているというものです。
Nletsを通じたデータ共有の実態
Nletsは、州、地方、連邦の警察機関間で州住民の個人データ、特に運転免許データの共有を促進しています。過去20年間にわたり、ほとんどの州が、各州の車両管理局(DMV)データベースからの運転免許証やその他の情報を、米国およびカナダの約18,000の連邦および地方の法執行機関が検索・取得できるようにしてきました。この慣行により、これらの機関は州職員の知識や関与なしに、住民のデータに直接アクセスできる状態にあります。
議員団の書簡によると、2025年10月1日までの1年間で、Nletsを通じて2億9000万件以上のDMVデータ照会が行われ、そのうちICEからは29万件以上、国土安全保障省捜査局からは約60万件の照会があったとされています。
ICEによるデータ利用と懸念される影響
議員団は、ICEが運転免許証の写真を、路上で人々を特定するために使用している顔認識アプリ「Mobile Fortify」に利用している可能性を指摘しています。このアプリは2億枚もの写真に依存しているとされており、このようなデータ共有は個人のプライバシーと市民的自由に対する重大な脅威となり得ます。
議員団は、州知事に対し、ICEおよび「トランプの衝撃部隊として行動している他の連邦機関」へのアクセスを停止するよう求めました。これは、連邦機関が重大な犯罪解決のために州から情報を得ることを妨げるものではなく、むしろ説明責任を高め、乱用を減らすために、州職員がデータ要求を事前に審査できるようにすることを目的としています。
情報ギャップと州の対応
書簡では、Nletsのシステムが技術的に複雑であるため、多くの州政府関係者が自州がどのように住民のデータを連邦機関や州外機関と共有しているかを理解していないという「情報ギャップ」が、データ共有が制限されない主要な理由であると指摘されています。しかし、イリノイ州、ニューヨーク州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ワシントン州など、一部の州はすでにNletsを介したICEのアクセスを制限しています。
今後の展望とプライバシー保護の重要性
議員団は、この慣行をいつでも停止できるのは州知事の権限であることを強調しています。今回の警告は、デジタル時代における個人データの保護と、連邦機関による監視の拡大に対する懸念が高まっていることを浮き彫りにしています。州政府には、住民のプライバシーを守るためのより積極的な行動が求められています。
