導入
米国政府は、ネバダ州のサッカーパスにある世界最大級のリチウム鉱山を運営するリチウム・アメリカス社に対し、5%の株式取得を発表しました。これは、同社とGMの合弁事業における5%の株式と合わせて、重要鉱物の国内サプライチェーン確保に向けたトランプ政権の最新の動きとなります。
戦略的資源としてのリチウム
リチウムは、電気自動車のバッテリー、風力・太陽光エネルギー貯蔵システム、あらゆる種類の充電式デバイスに不可欠な要素です。米国は現在、年間5,000メートルトン未満のリチウムしか生産しておらず、中国の年間40,000メートルトンと比較しても大幅に少ない状況です。バイデン政権とトランプ政権の両方が、リチウムの海外輸入への依存度を減らすことを目指しており、今回の資本参加は国内供給網の安全保障を強化するための重要な一歩と見られています。
サッカーパス鉱山の概要と課題
サッカーパス鉱山は、2028年に完全稼働すれば西半球で最大のリチウム生産拠点となり、年間約40,000メートルトンの炭酸リチウムを生産する見込みです。しかし、このプロジェクトは2023年の建設開始以来、地元の先住民部族、牧場主、環境保護団体から激しい反対に直面してきました。2025年2月のヒューマン・ライツ・ウォッチとアメリカ自由人権協会による報告書では、連邦政府の鉱山許可が先住民の権利を侵害し、「自由、事前、かつ情報に基づいた同意」を得られなかったと指摘されています。これらの社会・環境的課題は、鉱山の安定的な運営とサプライチェーンの信頼性に影響を与える可能性があります。
政府介入の背景と目的
今回の資本参加は、2024年10月にバイデン政権がリチウム・アメリカス社に提供した22.6億ドルの融資契約の再構築の一環として行われました。エネルギー長官クリス・ライト氏は、世界的なリチウム価格の下落を受け、鉱山の事業継続性を確保するために米国が株式を取得する必要があったと述べています。トランプ政権は最近、同様の動きを見せており、8月にはインテルに10%、7月には米国の唯一のレアアース生産者であるMPマテリアルズに15%の株式を取得しています。これは、重要産業における国内生産能力とサプライチェーンのレジリエンスを強化するという明確な戦略を示しています。
今後の展望
米国政府によるリチウム鉱山への直接的な資本参加は、重要鉱物のサプライチェーンにおける国家安全保障上の利益を確保するための積極的なアプローチを浮き彫りにしています。これにより、国内のリチウム生産が加速し、海外依存度が低下することが期待されますが、同時に先住民の権利や環境保護といった課題への継続的な対応が求められます。この動きは、グローバルなサプライチェーンの不安定化が進む中で、各国が自国の経済的・戦略的利益を守るための新たなモデルとなる可能性があります。
元記事: https://www.theverge.com/news/790057/lithium-mine-us-trump-us-government-stake-thacker-pass