Arturia、44種類のシンセサイザーを凝縮したコンパクトなキーボード「AstroLab 37」を発表

はじめに:Arturia AstroLab 37が登場

フランスの楽器メーカーArturiaは、ステージキーボードシリーズの最新作として、コンパクトで手頃な価格の「AstroLab 37」を発表しました。この最新モデルは、その名の通り37鍵盤を備え、価格はわずか699ドル。同社の定評あるシンセサイザー音源を44種類も内蔵しており、多くのミュージシャンにとって魅力的な選択肢となるでしょう。

昨年ローンチされたAstroLabシリーズは、当初88鍵モデルが2,999ドル、61鍵モデルが1,999ドルと、大型で高価な製品でした。しかし、AstroLab 37は、それらの上位機種と同じソニックレパートリーをより小さく、よりポータブルなパッケージに収めることに成功しました。

AnalogLabの魂をハードウェアに:音源とプリセット

AstroLabシリーズの最大の特徴は、Arturiaの人気ソフトウェアシンセエミュレーションである「AnalogLab」をハードウェアで利用できる点にあります。ArturiaのV Collectionに収録されているYamaha CS-80やFairlight CMIといった伝説的なシンセサイザーのサウンドが、AstroLabを通じてスタンドアローン楽器として提供されます。

AstroLab 37には、1,800以上のプリセットがプリロードされており、アコースティックピアノからMinimoogのようなアナログクラシック、Ensoniq SQ-80のような80年代のデジタルローファイマシンまで、44種類の楽器をカバーしています。特にRhodesエミュレーションや、筆者がお気に入りというArturiaのソフトウェアシンセ「Pigments」のハードウェア版へのアクセスは高く評価されています。ただし、オルガンやアコースティックピアノの音色については、Nordなどの専門メーカーの製品に一歩譲ると評されています。

パフォーマンスに特化した設計

AstroLab 37は、そのステージキーボードという位置づけから、パフォーマンスに最適化された機能を搭載しています。ライブ中に素早くアクセスできるよう、サウンドタイプ(ベース、リードなど)、楽器、お気に入り、サウンドバンクでフィルターをかけることが可能です。また、プリセットをグループ化してワンボタンでアクセスできる「Songs」機能や、セットリストに沿って曲をまとめる「Playlists」機能は、ライブミュージシャンにとって非常に便利です。

本体左側には4つのマクロノブがあり、プリセットによって異なるパラメータをコントロールできます。右側にはコーラス、リバーブ、ディレイなどのエフェクトを調整する4つのノブが配置されており、最低限のサウンドコントロールが可能です。しかし、一からパッチを作成したり、本格的なサウンドデザインを行う機能は搭載されていません。そのためには、ArturiaのV Collectionソフトウェア(199ドルから)を別途購入し、カスタムプリセットをアップロードする必要があります。

コンパクトさがもたらすトレードオフ:ハードウェアと操作性

AstroLab 37は、上位モデルからダウンサイジングされたことで、音響的な損失はないものの、ハードウェアにはいくつかの違いがあります。フェイスプレートはプラスチック製ですが、安っぽさは感じさせません。上位モデルと同じく、木製のサイドパネルが採用されています。

主な違いは以下の通りです。

  • 上位モデルにあるカラーディスプレイ付きの大型ナビゲーションホイールの代わりに、小型のエンコーダーとディスプレイが採用されています。
  • ロッキング電源コードが省かれています。
  • 鍵盤は37スリムキーのシンセアクション鍵盤で、アフタータッチに対応しています。これは、ArturiaのKeyStep mk2コントローラーと同じ鍵盤である可能性が高いとされています。上位モデルのセミウェイテッド鍵盤やFatar製ハンマーアクション鍵盤に比べると、プレミアム感には欠けます。

また、ワイヤレス接続(Wi-Fi)を介してAnalogLabデスクトップソフトウェアやAstroLab Connectモバイルアプリから追加のサウンドをロードできますが、ワイヤレス接続の不安定さが指摘されています。特に、Wi-Fiネットワーク経由での接続は困難であり、ホットスポット接続も途中で切断される傾向があるとのことです。

結論:誰のためのAstroLab 37か

AstroLab 37は、上位モデルの鍵盤の感触を犠牲にする代わりに、高いポータブル性手頃な価格を実現しました。鍵盤の分割機能など、一部の機能は小型鍵盤では十分に活用できないかもしれませんが、多くのプロフェッショナルなキーボーディストが大型の鍵盤を好む一方で、この製品は特定のニッチな層に響くでしょう。

特に、最小限のスペースに最大限のサウンドを詰め込みたいミュージシャンや、ライブ中にラップトップのOSアップデートによるトラブルを避けたいパフォーマーにとって、AstroLab 37は非常に魅力的な選択肢となりそうです。


元記事: https://www.theverge.com/tech/828658/arturia-astrolab-37-synth-stage-keyboard