マイケル・バリー対Nvidia:AIブームの真実を巡る論争

「ビッグ・ショート」投資家、Nvidiaに宣戦布告

感謝祭の時期、金融界では著名投資家マイケル・バリー氏がAIの巨人Nvidiaに対する攻撃を激化させていることが話題となっています。「ビッグ・ショート」で知られるバリー氏は、AIブームが「マニアックな領域」に入っており、悲惨な結末を迎える運命にあると主張し、Nvidiaにベットしています。彼が自身の影響力と急速に拡大するフォロワーを活用し、この崩壊の引き金となる可能性を指摘する声も上がっています。

バリー氏のNvidiaに対する疑惑

バリー氏のNvidiaに対する告発は具体的かつ手厳しいものです。彼は主に以下の点を挙げています。

  • 株式報酬による株主価値の希薄化:Nvidiaの株式ベース報酬は株主から1125億ドルを奪い、実質的に「オーナーの利益を50%削減」していると主張。
  • 減価償却の遅延:AI企業が設備(特にNvidiaのGPU)の減価償却を意図的に遅らせ、急速に価値を失っている機器の耐用年数を過大評価していると示唆。これにより、過剰な設備投資を正当化していると見ています。
  • 循環的な資金調達スキーム:AI顧客からの需要は「ディーラーによって資金提供されている」見せかけに過ぎず、循環的な資金調達スキームが存在すると指摘。

Nvidiaの反論と市場の反応

Nvidiaは、バリー氏の主張に対し沈黙を破り、7ページにわたるメモで反論しました。同社は、バリー氏の計算は「RSU税を誤って含んでいる」ため誤りであり、実際の自社株買い額は910億ドルであると述べています。また、Nvidiaの従業員報酬は「同業他社と一貫している」と強調し、同社が決してエンロンのような企業ではないことを明確にしました。バリー氏はこれに対し、Nvidiaを1990年代後半のシスコと比較し、当時シスコが必要とされないインフラを過剰に構築し、その株価が75%暴落した前例を挙げています。

Nvidiaの株価は2023年初頭から12倍に高騰し、時価総額は4.5兆ドルに達しています。これは市場がこれまでに見たことのない速さでの上昇です。

過去の予言と新たな影響力

バリー氏の経歴は複雑です。住宅危機を正確に予測し、高い評価を得ましたが、2008年以降は常に様々な終末論を予測し、「パーマベア(永久的な弱気筋)」というレッテルを貼られることもありました。彼はGameStop株を早期に購入しましたが、ミーム株暴騰前に売却し、テスラを空売りして大金を失った経験もあります。

しかし、彼は今、新たな舞台で活動を開始しています。最近、規制やコンプライアンスの制約から投資会社Scion Asset Managementの登録を抹消し、自身のSubstack「Cassandra Unchained」を立ち上げました。年間400ドルの購読料で、わずか1週間足らずで9万人もの購読者を獲得しており、AI産業全体に対する彼の主張を展開する強力なプラットフォームとなっています。

市場に広がる不確実性:バリー氏が引き起こす波紋

バリー氏は炭鉱のカナリアであり、差し迫った崩壊を警告しているのでしょうか?それとも、彼の名声、実績、そして規制のない声が、彼が予測するまさにその破滅の引き金となるのでしょうか?歴史は、これが荒唐無稽ではないことを示唆しています。ジム・チャノス氏(エンロン)やデビッド・アインホーン氏(リーマン・ブラザーズ)といった著名な空売り投資家たちは、それぞれのケースで根本的な問題は存在しましたが、彼らの批判とプラットフォームが市場の信頼を揺るがし、崩壊を加速させました

もし十分な投資家がバリー氏のAI過剰構築に関する主張を信じれば、彼らはNvidia株を売却するでしょう。その売りがバリー氏の弱気論を裏付け、さらなる売りを誘発する可能性があります。バリー氏はすべての詳細において正しい必要はなく、市場を動かすほどの説得力があればよいのです。Nvidiaは、驚異的な時価総額とAI時代の最も不可欠な企業としての地位を含め、失うものがすべてあります。一方、バリー氏は自身の評判以外に失うものはなく、新たに手に入れた「メガホン」を今後も最大限に活用していくことでしょう。


元記事: https://techcrunch.com/2025/11/27/this-thanksgivings-real-drama-may-be-michael-burry-versus-nvidia/