デビッド・サックス氏の役割と新たな疑惑
ドナルド・トランプ政権で人工知能(AI)および暗号通貨の責任者を務めるデビッド・サックス氏が、その役職を通じて自身の投資や友人に多大な利益をもたらす可能性があると、ニューヨーク・タイムズ紙が新たな報告書で指摘しました。
同紙の分析によると、サックス氏の708件のテクノロジー投資のうち、449件が彼が支持する政策から恩恵を受ける可能性のあるAI企業であるとされています。
これに対し、サックス氏は自身のX(旧Twitter)投稿で強く反論し、5ヶ月にわたる取材プロセスで「疑惑は詳細に論破された」とし、今回の報告書を「取るに足らない話」と一蹴しました。
過去の批判と倫理問題
サックス氏の政治的役割と投資との間の利益相反の可能性については、以前から批判がありました。例えば、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出の民主党議員)は今年初め、サックス氏が「暗号資産に投資する企業を率いながら、国の暗号政策を指導している」ことは「明確な利益相反」であり、通常は連邦法で禁止されていると述べました。
サックス氏は、大半の暗号資産およびAI資産を売却するという倫理規定免除を受けていますが、ニューヨーク・タイムズ紙は、公表されている倫理申告書には残りの暗号資産およびAI投資の価値や売却時期が記載されていないと指摘しています。ワシントン大学の政府倫理専門法学教授キャスリーン・クラーク氏も、サックス氏の暗号免除を検討した後、これを「汚職」と評しています。
NYTが指摘するさらなる「絡み合った利益」
ニューヨーク・タイムズ紙はさらに、サックス氏の申告書が数百件の投資をハードウェアまたはソフトウェアとして分類しているにもかかわらず、該当企業がマーケティングで自社をAIビジネスとして売り込んでいると報じています。
サックス氏の「絡み合った利益」を例証するものとして、同紙は7月に開催されたホワイトハウスのサミットに言及しています。このサミットではトランプ氏がAIロードマップを発表しましたが、ホワイトハウスの首席補佐官スージー・ワイルズ氏が、サックス氏が共同ホストを務める「All-In」ポッドキャストがイベントの唯一のホストとなるのを防ぐために介入したとされています。また、「All-In」はプライベートレセプションやその他のイベントへのアクセス権と引き換えに、潜在的なスポンサーに100万ドルを要求していたとニューヨーク・タイムズ紙は主張しています。
さらに同紙は、サックス氏がこの春にNvidiaのCEOジェンセン・ファン氏と親密になり、中国を含む世界中でNvidiaチップの販売制限を撤廃する上で役割を果たしたと報じました。右翼メディア関係者で元トランプ補佐官のスティーブ・バノン氏は、サックス氏を「テクノロジー企業の連中が制御不能になっている」政権の象徴と見なしています。
サックス氏側からの反論
サックス氏の広報担当者ジェシカ・ホフマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に対し「この利益相反の物語は虚偽である」と述べました。ホフマン氏は、サックス氏が特別政府職員の規定を遵守しており、政府倫理局が売却すべき投資を決定したこと、そして彼の政府における役割は彼に利益をもたらすどころか費用を発生させていると主張しました。ホワイトハウスの広報担当者リズ・ハストン氏は、サックス氏を「アメリカの技術的優位性を確立するというトランプ大統領の課題にとって不可欠な資産」と評価しています。
サックス氏はニューヨーク・タイムズ紙の報道に対する自身の投稿で、サックス氏が雇った法律事務所クレア・ロックからの書簡を公開しました。この書簡は、記者たちが「サックス氏のホワイトハウスでの職務と民間テクノロジー部門での経歴との間の利益相反を見つけて報告せよ」という「明確な指示を受けていた」と主張しています。
書簡はまた、AIサミットでの「All-In」ポッドキャストの役割に関する具体的な内容にも言及し、AIサミットは非営利イベントであり、「All-In」ポッドキャストは「イベントの開催で損失を出した」と述べています。「2社のスポンサーがイベント費用の一部を賄うために協力しましたが、ロゴ掲載以外の何も得ていません。トランプ大統領へのアクセスが提供されたことはなく、VIPレセプションも開催されませんでした」と書簡は結んでいます。
