米国でインターネット年齢確認法案が議会を席巻 – 広がるアプリストア規制の波

全米に広がる年齢確認の動き

米国で、インターネット上の年齢確認を全国的に義務付ける新たな動きが議会で勢いを増しています。これは、特に子どもたちのオンライン上の安全を確保することを目的としており、特定のウェブサイトだけでなく、アプリストア全体にその責任を負わせるという、これまでとは異なるアプローチが注目されています。

この新しいモデルは、アプリストアがユーザーの年齢を確認し、アプリがダウンロードされる際にその情報を連携させるというものです。この考え方自体は以前から存在していましたが、今年に入りユタ州で最初の法律が可決されたのを皮切りに、いくつかの州で同様の法律が制定されています。

アプリストア説明責任法 (ASA) の登場

連邦議会では、アプリストア説明責任法(App Store Accountability Act: ASA)として、このモデルが提案されています。これは、マイク・リー上院議員(共和党、ユタ州選出)とジョン・ジェームズ下院議員(共和党、ミシガン州選出)によって提出された法案で、子どもたちのオンライン安全に関する包括的な法案パッケージの一部として議論される予定です。

この法案は、Pinterestが新たな業界支持を表明したことでさらに勢いを得ています。Meta、Snap、Xといった大手企業も、アプリストアによる年齢確認アプローチに広く支持を表明しており、連邦法案の導入を歓迎しています。

賛否両論と法的な課題

しかし、この包括的な年齢確認義務化には反対の声も上がっています。特に、米国憲法修正第1条で保障される言論の自由を侵害するという批判があります。テキサス州で可決された同様の法律は、すでに技術業界団体CCIAによって提訴され、法廷で争われています。最高裁判所はポルノサイトに対する年齢確認法を支持していますが、すべてのアプリに年齢制限を設けることは別の法的問題であり、まだ判断が下されていません。

米国以外でも、英国のオンライン安全法が7月から年齢確認を義務付けたことで、ユーザーが回避策を見つけたり、政府発行のIDや顔スキャンを提出することへのセキュリティ上の懸念が表明されたりと、多くの問題が発生しています。アプリストアレベルでの確認は一部の懸念を軽減するかもしれませんが、プライバシーおよびセキュリティの専門家は、機密情報が漏洩するリスクを完全に回避することはできないと結論付けています。

推進派の主張と業界の思惑

法案の推進派は、これを「常識的な措置」であり、「大手ハイテク企業にも地元の角の店と同じ基準を適用する」ものだと主張しています。リー上院議員は、この法案が憲法修正第1条の課題に耐えうると自信を表明しています。

また、業界の支持者にとっては、年齢確認の負担をアプリストア運営者に移すことで、自社のプラットフォームにかかる責任の一部を軽減できるというメリットがあります。彼らは、個々のアプリごとに確認を行うよりも、消費者にとってもナビゲートしやすく、より多くのデータを共有する必要がなくなると主張しています。

リー上院議員は、Metaからの支持も含め、このような支持が「大きな違いを生む」と述べています。しかし、AppleとGoogleは、開発者とのデータ共有に関する提案に懸念を示しており、アプリストア運営者としての立場から、法案の影響を注視しています。

「パッチワーク」状態への懸念と統一基準への期待

州レベルでアプリストアの年齢確認モデルが広がるにつれて、各州で異なる基準が乱立する「パッチワーク」状態が懸念されています。カリフォルニア州の法律は、アプリストアが独立してユーザーの年齢を確認することを義務付けていませんが、デバイス上で生年月日を入力するよう促し、アプリのダウンロード時にその年齢範囲のシグナルをアプリ開発者に送ることを求めています。この違いが、Googleがカリフォルニア州の法律を支持する要因となりましたが、Appleはまだ同様の動きを見せていません。

PinterestのCEOであるビル・レディ氏は、連邦標準の必要性を訴え、「単一の全国的なアプローチは、断片化を減らし、家族が1つのシンプルな場所でティーンがダウンロードするアプリを承認できるようにするだろう」と述べています。テキサス州の法律を巡る法的争いの行方は、将来の連邦法に重要な教訓を与える可能性がありますが、リー上院議員は「遅らせる理由はない」と、法案の推進に自信を見せています。


元記事: https://www.theverge.com/policy/830877/app-store-age-verification-act-pinterest-endorsement