「不老不死」への新たな一歩?ブライアン・ジョンソンの異例の試み
2025年12月2日(米国時間)、投資家で起業家のブライアン・ジョンソン氏が、不老不死を追求する自身の研究の一環として、大量のサイケデリックスキノコを摂取する様子をライブストリームで公開し、大きな注目を集めました。グライムス氏のDJセットが流れる中、ジョンソン氏は5.24グラムものシロシビン含有キノコを摂取。この異例の試みは、サイケデリックスが彼の目指す「不老不死」に寄与するかを探るものです。
奇抜なライフハックとビジネス戦略
ブライアン・ジョンソン氏は、自身の金融スタートアップBraintreeを売却して巨万の富を築きました。彼は長年「不老不死」の達成を公言し、その過程をSNSで詳細に記録しています。彼の取り組みは、息子からの血漿輸血、1日100錠以上の薬の服用、性器へのボトックス注射など、時に奇抜とも言えるものです。
これらの活動は、彼が設立した神経技術企業Kernel、そしてサプリメントやオリーブオイルなどを販売するBlueprintのプロモーションとしての側面も持ち合わせています。今回のライブストリームも、彼自身の技術であるKernelのデバイス(巨大な黒いヘルメット)を使って、薬物摂取中の身体反応をモニタリングする様子が披露されました。
テック界の大物たちが絶賛する異端の実験
ジョンソン氏のキノコトリップのライブストリームは、「Super Bowlのようなコマーシャルを売る」という冗談が飛び出すほどの演出で構成され、Windows XPを思わせるグラフィックが使用されました。この配信は、X(旧Twitter)上で100万人以上が視聴し、リアルタイムおよびリプレイで大きな反響を呼びました。
配信中には、総資産100億ドルを超える著名なコメンテーターたちが参加し、ジョンソン氏の「勇敢な挑戦」を称賛しました。彼らはジョンソン氏を単なる奇人ではなく、「先見の明のある人物」として評価しました。
- Salesforceの創設者兼CEOであるマーク・ベニオフ氏は、ジョンソン氏の取り組みを聖書のヤコブの物語になぞらえ、「彼は娯楽目的でこれを行っているのではない」と擁護しました。
- AngelListの著名な投資家であるナヴァル・ラヴィカント氏は、ジョンソン氏を「一人FDA(米食品医薬品局)」と表現し、規制当局やバイオエシックスが科学の進歩を妨げていると批判。これは、マーク・アンドリーセン氏が2年前に発表した「社会貢献」や「テック倫理」がイノベーションの敵であると主張するマニフェストを想起させるものです。
- ラヴィカント氏はさらに、「彼が長く生き残り、私たちに『チートコード』を教えてくれることを願う。このような『ブライアン』が千人、万人と必要だ」と述べました。
「長寿脱出速度」とサイケデリックス研究の歴史
ライブストリーム中、ジョンソン氏自身はアイマスクと重いブランケットに包まれ、外部の称賛からは切り離された状態でした。彼の追求する中心概念の一つが「長寿脱出速度(longevity escape velocity)」です。これは、人間が生物学的に老化しなくなる時点を指し、「時間とともに年は取るが、生物学的には同じ年齢を保つ」というものです。共同創業者のケイト・トロ氏は、2039年までにジョンソン氏を不死にすることを目指し、そのプロトコルを無償で共有することで「皆で共にこの旅を」と呼びかけています。
サイケデリックスの治療応用に関する研究は、学術界でも活発に進められています。ジョンソン氏の試みは、新しいものではありません。1960年代にはハーバード大学の心理学者ティモシー・リアリー氏が、サイケデリックスを精神拡張ツールとして普及させる運動を主導しました。リアリー氏もまた、「SMI²LE」(Space Migration, Intelligence Increase, Life Extension)という概念で、今日のテックエリートが関心を寄せるテーマと同様の関心を持っていました。
リアリー氏の時代には、サイケデリックスは音楽や芸術のための精神拡張を強調する広範な文化運動の中心にありました。ケン・キーシーやグレイトフル・デッド、ジョン・レノンといったアーティストや作家たちとの交流も深く、サイケデリックスはカウンターカルチャーと密接に結びついていました。
現代における「不老不死」の追求と皮肉
しかし、2世代後のジョンソン氏の「不老不死」への探求は、サイケデリックスがかつて担った芸術的な文脈とは大きく異なります。彼のライブストリームの背景は、薄暗いサイケデリックな部屋ではなく、ベージュ色のオフィスのような空間で、ラップトップと生体認証モニタリングツールが並んでいます。ジョンソン氏が心地よさそうに繭の中にいる姿を見たベニオフ氏は、「スリープマスク会社との素晴らしいスポンサーシップの機会を逃している」と皮肉を込めてコメントしました。
最終的にジョンソン氏は目覚め、唾液サンプルが採取され、脳活動を記録する黒いヘルメットを装着し、壁を見つめます。これは、現代の「不老不死」革命が、いかにハイテクで、データ駆動型で、そして時に無機質なものとして展開されているかを示す象徴的な光景と言えるでしょう。
元記事: https://techcrunch.com/2025/12/02/the-spectacle-of-bryan-johnson-and-his-livestreamed-shrooms-trip/
