はじめに:Appleの「脳の流出」に拍車か
Appleのハードウェア技術担当上級副社長であるジョニー・スルージ氏が、同社を去ることを真剣に検討していると報じられ、テクノロジー業界に衝撃が走っています。Bloombergのマーク・ガーマン氏によると、スルージ氏は最近、ティム・クックCEOに対し、近い将来の退職を検討しており、別の企業への移籍を希望していると伝えたとのことです。
スルージ氏は、Appleのチップ設計を指揮し、画期的なAppleシリコンへの移行を主導した立役者であり、彼の退職は同社にとって大きな痛手となるでしょう。
相次ぐ幹部の退社とその影響
スルージ氏の退職検討は、Appleで進行中の幹部人材流出という、より広範な問題の一端に過ぎません。つい先日、長年のデザイナーであるアラン・ダイ氏がMetaに引き抜かれたことが明らかになったばかりです。これに加えて、以下の主要幹部がAppleを去る、あるいは退任を表明しています:
- 法務担当上級副社長 ケイト・アダムス氏(引退)
- 環境・政策・社会イニシアティブ担当副社長 リサ・ジャクソン氏
- AI責任者 ジョン・ジアナンドレア氏
- 最高執行責任者 ジェフ・ウィリアムズ氏(引退)
- 最高財務責任者 ルカ・マエストリ氏
さらに、ティム・クックCEO自身の退任も噂されており、ガーマン氏は、これらの離職がクック氏の在任期間中で「最も激動の時期」をもたらしていると指摘しています。
AI部門の深刻な人材流出と外部AIへの懸念
特に憂慮すべきは、Appleの人工知能(AI)組織における「広範な崩壊」です。AIモデル責任者のルオミン・パン氏をはじめ、トム・ガンター氏やフランク・チュー氏といったAI部門の主要な人材が今年に入ってから既に退職しています。
また、Siriと検索の責任者であったロビー・ウォーカー氏とその後任のケイ・ヤン氏もMetaに移籍。AppleのAIグループは士気低下に悩まされており、Google Geminiのような外部AI技術への依存度が高まることへの懸念も浮上しています。この結果、約1ダースの主要なAI研究者と、AIロボティクスソフトウェアチームのリーダーであるジアン・チャン氏もMetaに去っています。
その他の主要部門における人材流出
人材流出はAI部門に留まらず、他の重要な部門にも及んでいます。ユーザーインターフェースチームはビリー・ソレンティーノ氏の離脱に続き、アラン・ダイ氏の退職という結果になりました。ハードウェア設計グループは「ほぼ壊滅状態」と報じられ、多くの従業員が他社や元デザイン責任者のジョニー・アイブ氏のスタジオ「LoveFrom」に移籍しています。
iPhone Airのデザイナー、アビドゥル・チョードリー氏はAIスタートアップへ、ディスプレイ技術の主要ディレクターでありVision Proヘッドセットの光学系も監督していたチェン・チェン氏はOpenAIへ、そしてトップハードウェアエンジニアリング幹部の一人であるタン・タン氏も同様にOpenAIへ去りました。さらには、Appleの文化と慣行を継承する役割を担う社内プログラム、Apple Universityの学長リチャード・ロック氏までもが離職しています。
Appleの対応と今後の展望
クックCEOは、スルージ氏を引き留めるため、多額の報酬と責任拡大(最高技術責任者への昇格を含む)の可能性を提示しているとされています。これにより、スルージ氏はハードウェアエンジニアリングとシリコン技術の幅広い分野を統括し、Appleで2番目に強力な幹部となる可能性があります。
ガーマン氏は、Appleがこの10年間「成功した新製品カテゴリーを投入していない」ことが、より機敏な競合他社に才能を引き抜かれる原因となっていると指摘しています。Appleの経営陣は、この人材流出を「重大な懸念事項」として受け止め、人事部門に採用と人材維持の取り組みを強化するよう指示しています。
元記事: https://www.macrumors.com/2025/12/07/srouji-could-be-next-to-go-as-exodus-continues/
