はじめに
AIコーディングアシスタント「Cursor」の開発元であるAnysphereのCEO、マイケル・トゥルーエル氏は、OpenAIやAnthropicといった大手AI企業との競争が激化する中でも、自社の優位性について自信を表明しました。直近の11月には年間収益が10億ドルに達し、先月には293億ドルの評価額で23億ドルを調達するなど、同社は急速な成長を遂げています。
競争戦略と独自モデルの強み
トゥルーエル氏は、競合他社が提供するAIコーディング製品を「コンセプトカー」と形容する一方、Cursorは「生産車」であると表現しました。同氏は、「エンジンとそれに合わせたコンセプトカーを製造するのではなく、エンドツーエンドの製造された完成車のようなものだ」と述べ、市場で提供されている最高のインテリジェンスを多様なプロバイダーから取り入れ、さらに独自の製品特化型モデルを開発していると説明しました。Cursorは、自社開発のLLMが「世界中のどのLLMよりも多くのコードを生成している」と昨年11月に発表しており、この技術が競争力の源泉となっています。
価格モデルの変更と顧客体験
Cursorが競合であるLLMメーカーに依存していることと、それに伴う高コストは、以前からシリコンバレーのVCの間で憶測の対象となっていました。実際、OpenAIがAnysphereの買収を検討したものの、Anysphereがこれを拒否したという経緯もあります。こうした背景から、Cursorは今年7月、それまでの包括的なサブスクリプションから利用量に応じた従量課金制へと価格モデルを移行しました。これにより一部のユーザーから予期せぬ高額請求に対する不満の声が上がりましたが、トゥルーエル氏は、ユーザーの利用形態が「簡単なJavaScriptの質問」から「何時間にもわたる作業」へと変化したため、消費量ベースのモデルへの移行が必要だったと説明しています。今後は、企業がエンジニアの利用状況やコストを管理できるようなクラウドコンピューティングのようなコスト管理ツールの提供にも注力するとのことです。
今後の展望:エージェント機能とチーム向けサービス
トゥルーエル氏は、今後1年間で特に注力する2つの主要分野を挙げました。一つは、より複雑なエージェント機能の強化です。これは、記述は簡潔ながらも実行には多大な時間と試行錯誤を要するようなエンドツーエンドのタスク、例えばバグ修正などをCursorに完全に任せることを目指しています。もう一つは、「チームをサービス提供の最小単位」と捉えることで、個々の開発者だけでなく、チーム全体のワークフローを支援するソリューションを提供していく方針です。Cursorのコードレビュー製品が既に一部の顧客でAIまたは人間によって書かれたすべてのプルリクエストの分析に使用されていることが例として挙げられ、今後もソフトウェア開発ライフサイクルにおけるコード記述以外の部分を支援する機能の拡充が期待されます。大手競合他社も同様にエージェント技術の分野に注力しており、Amazonはすでに数日間稼働できるコーディングツールを発表し、Anthropic、OpenAI、Microsoft、AWSなどは、オープンソースのエージェント間相互運用性標準を開発するためのコンソーシアムをLinux Foundationのもとで立ち上げています。
